生物学者と化学者の“ラーメン屋会議”が食糧危機を解決!?

分子の力でアフリカを緑の大地に
清水 修, ブルーバックス 編集部

まず、ストリゴラクトンを発見。次に『自殺発芽』を考案。さらに、高価なストリゴラクトン合成の代替案として「エチレンガス散布」を考え出した。とはいえ、エチレンは「ガス」なので、よくTVに出てくる映像のように広大な農地に飛行機で農薬を撒くような方法では散布できない。風に飛ばされてしまうからだ。結局、米国政府はインジェクターを使って一定の間隔で土中にエチレンガスを注入していった。

当時、米国でストライガが広がっていたエリアはノースカロライナ州とサウスカロライナ州。アフリカ大陸の被害エリアに比べれば小さな地域だが、ローラー作戦でガスを注入していくとなるととんでもなく時間がかかる。

「それでも米国はがんばってエチレンを土中に注入し続け、50年かけてストライガを撲滅したと言われています。まさに執念ですよね。しかし、アフリカ大陸でこれと同じことをやったら、規模としては何百倍も広いので、撲滅するまでとんでもない年月がかかってしまいます。アフリカでストライガ撲滅をするにはもっと別の方法を考えなければならないと思いました」

こうして、土屋さんはストリゴラクトンやエチレンに代わる「何か」を求めて研究を続けた。

ストライガのストリゴラクトン受容体に大注目

土屋さんが研究を始めた当時、ストリゴラクトンに関わる他の研究者たちは皆、「もっと安くて、簡単に作れる『ストリゴラクトンによく似た分子』を作ろう」と、ストリゴラクトンの分子を改造しようとしていた。ストリゴラクトンの分子の『構造式(亀の甲のようなあの図)』の各パーツを作りやすいパーツに入れかえて改造していくのだ。

しかし、そうやって試作された分子はいずれも、「安く作れるけど活性が低い」とか「活性が高いものを作れたが、作り方がとても大変」というかんじで、なかなか決定打が出てこなかった。また、前述したように、ストリゴラクトンは(改造しても)植物ホルモンなので、ストライガ以外の植物や土壌に影響を与えてしまう。

だから、自殺発芽に使う「ストリゴラクトンの代替物」を開発するならば、「簡単に作れて、安くて、ストライガにしか効かない(他のものに影響を与えない)物質」である必要があった。一体、そんな条件の厳しいものを本当に作れるのだろうか?

「そこでぼくらが考えたのは、ストリゴラクトンを改造するのではなくて、寄生植物ストライガのほうにある『ストリゴラクトン受容体(タンパク質)』を調べるということでした。ストライガは宿主が出すストリゴラクトンを感知するための受容体を持っています。両者の関係は、いわば、『鍵(ストリゴラクトン)と鍵穴(受容体)』のようなもの。鍵穴の形を調べて、そこにぴったりフィットするような(ストリゴラクトンとは関係ない)鍵となる分子を作ればいいじゃないか、と」

【図】鍵と鍵穴の関係ストリゴラクトン(鍵)とストリゴラクトン受容体タンパク質(鍵穴)の関係  拡大画像表示
【写真】新分子で自殺発芽自殺発芽の仕組み  拡大画像表示

土屋さんは、ストライガを調べ上げて、ストリゴラクトンを受容するタンパク質を11個、見つけ出した。

「この11個はすべてストリゴラクトンを受容できるので、できれば11個すべてが反応してくれる分子(ストリゴラクトン代替物)を作り出したい。でも順列組み合わせ的に実験して確認するだけでも大変です、11個もあるので……。ぼくは途方に暮れました。そんな時に『伝説のラーメン会議』が開催されたのです」

え? ラーメン会議? 魔女の雑草とか大規模被害とか自殺発芽とか、シリアスな話でここまできたのに、いきなり、ラーメン会議ですかぁ?

「大事な会議だったんです(笑)。今、思えば、あの日がブレークスルーのきっかけになったんですよ」

 うーん、ま、とりあえず、続きをうかがいましょう!

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