40歳の独身女性が、突如子宮頸がんの罹患と余命を宣告される――そんな小説が吉川トリコさんの『余命一年、男をかう』だ。趣味は節約とキルト製作という堅実な人生を歩んでいた片倉唯が、ピンク色の頭のホストと出会い、「お金でかって」人生が大きく変わっていく。

その小説を読み、「もっと読みたいと思える小説に出会った」と語るバービーさんと、著者の吉川トリコさんの対談が「小説現代」2021年7月号で実現。対談前編「結婚後ふたりとも「世帯主」バービー×吉川トリコが語る結婚のこと・出産のこと」では、新婚のバービーさんの「世帯主どうする問題」まで飛び出しました。後編でも、バービーさんが結婚したときにFRaUwebに掲載されて大きな話題を呼んだ「僕が「料理で男の胃袋をつかみたくない」バービーと結婚した理由」記事の実現の背景や、フェミニズムについて、そして性欲ってタブーなの?など盛りだくさんでお届けします。

 

「砂鉄事変」がバービーさんにもたらした変化

吉川:そういえば、本がたくさん送られてくるっておっしゃっていましたね。

バービー:はい。実用書や自己啓発系のもの、スピリチュアル系など色々。小説もあったのですが、読もうという風に思わなかったんですよね。今回、吉川さんの作品を読んでから別の小説を読み始めたんですよ。こんなに文章だけで世界観が変わるんだってあらためて勉強になったし、すごく楽しかった。情報は文字だけなのに浮かぶカット割りとか映像の質だとか、照明の感じとか。なんて手軽だし、一番自分の能力を使っているし。それを知れたとてもいい機会でした。

吉川:小説を読んだことのある人は誰でも小説を書けると思っているんです。映画だとスタッフさんがたくさん必要だし、漫画家さんも絵が描けないといけない。小説は文字さえ書ければ一人でできるし、お金もかからないのですごく手軽で自由度の高い手段だと思います。

バービー:今回、ターニングポイントになったなあと。きっかけになった気がします。

吉川:書いてみたいと思いませんでしたか?

バービー:書きたくて書けないという、よくあるやつで(笑)。「おれはまだ本気をだしていない」みたいな(笑)。大学を卒業してからずっとなので。

吉川:砂鉄事変(2019年武田砂鉄さんがパーソナリティを務めるラジオ番組に、バービーさんがゲスト出演。その時のやりとりが話題に。ちなみに実際FRaUweb編集長はそのラジオを聴いてバービーさんに連載依頼をした)のあと、すぐくらいに連載が始まったんですよね?

リアルタイムで聞けなかったのですが、私のTwitterのタイムラインでの盛り上がりがすごくて。あのあと出版社からオファーが殺到したんじゃないかと。依頼を受けたとき、どんな気持ちでしたか?

撮影/杉山和行
 

バービー:書きたい気持ちはあり、マネージャーさんには言ったりもしていたんです。売り込みのために、資料みたいなものがないと誰にもジャッジしてもらえないから、とりあえず何か書いてくださいと言われていながら、それすら書いたこともなくて。なので、「本当に書いたことがないんです」ということを了承してもらって、スタートしました。

吉川:とてもそんな風に見えないですよね。バービーさんの文章は冷静でサービス心があふれていて、構成もしっかりしている。すごく頭のいい人が書いた整理された文章だと感じました。

バービー:『本音の置き場所』の第1章が本当に初めて書いたもので、ドギマギしながらでした。いま、こんな風に「ザ・文壇の対談」みたいなものをやっているのも不思議な感じです(笑)。小説も書きたいといいながら20代半ばくらいから読まなくなってしまっていたのが、今またこうやって読み始めたので、「これはそろそろ本気だすときなのか」という気持ちに少しなっています(笑)。