マンガ/おざわゆき 文/FRaU編集部

こんなおばあちゃんになりたい

「まり子・80歳 今日家を出ます」

ストーリー冒頭からこんな衝撃的なセリフとともに物語が大きく展開していく、おざわゆきさんのマンガ『傘寿まり子』。第42回講談社漫画賞 一般部門を受賞した本作ですが、その注目の理由の一つとして絶対に外せないのが主人公の年齢。なんと傘寿(80歳)なんです! これまでここまで高齢の主人公の物語があっただろうか……?

『傘寿まり子』第1巻より

今は亡き夫とともに建てた家で息子夫婦、孫夫婦とその子供の四世代で同居するベテラン作家・幸田まり子の元に、ある一人の作家仲間の訃報が届く。その人は自分と同じように四世代で同居する中で「孤独死」をしたというのだ。同居していた遺族の態度や発言にショックを受ける中、自身の家族の間では「住居問題」が勃発。まり子は老人の自分には居場所がないことを感じ、この年齢にして「家出」をして……!?

『傘寿まり子』第1巻より

住む場所を探すために不動産会社に行くも80歳・一人暮らしに契約を結んでくれるところもなく、お金や仕事があっても生きづらい社会の難しさに直面。最終的にたどり着いた場所はまさかのネットカフェ! 慣れない環境や変化にぶつかりながらも、そこから今まで関わることのなかった人々に触れ、新たな人生が広がり始め……、といったストーリーだ。

歳を重ねると自然と行動範囲が定まってきてしまい、変化に対して苦手意識や抵抗感が増してしまうことが多いような気がするが、まり子は起きた出来事に対してただ悲観的になるのではなく、「今できること」にひたむきに向き合い、新たに道を模索していく。

本作品には多世帯住宅の難しさ、孤独死、高齢者の住居問題など、この世代がぶち当たる社会問題がふんだんに盛り込まれており、そういった意味でリアリティがありながらも、苦難をもろともせず柔軟に今の状況を乗りこなす、そんなイキイキとした主人公・幸田まり子の姿に、思わず「私もこんなおばあちゃんになりたい!」とワクワクさせられる人も多いはず!

『傘寿まり子』第1巻より

また、家出を機に、再び人生が広がり始めたまり子に「ペット」という新たな出会いも……! 歳を重ねてからのペットとの生活は、経済、自身の健康面の問題などと難しいことも多い。これからどんなことが起きるのか…!?

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「10年後、20年後、私はどんな生活を送っているんだろう」

誰もがこんなことを1度や2度考えたことがあるはず。
希望で胸をいっぱいにさせることもあれば、ネガティブなことを考えて歳を重ねることを怖いと感じることも……。でも本作を読むと、「年齢に制限はない! 今この瞬間が一番若いんだ!」と勇気づけられる。

『傘寿まり子』第1巻より

作者のおざわゆきさんがこの漫画を通して読者に届けたいメッセージはなんだろうか?

「こんな世の中で、未来を夢見る事も難しくなってしまった私達。それでも歳は取っていくのです。心の隙間で感じられる希望、年老いても軽やかでキラキラした未来、それを『傘寿まり子』では描きました。まり子を読んで、ちょっとだけ年取るのが楽しみになってくれたらいいなと思っています」

このコロナ禍の影響もあってか、将来を想像した時、どうしてもマイナスな方向に考えが向いてしまうことも多い。だけど、そんな時には「傘寿まり子」にならって、物事のいい部分を見つけながら過ごしていけたら良いかもしれない!