そこに根拠はない
「昨年12月、ニューヨーク州で新型コロナ新規感染者の感染経路を調べたところ、飲食店で感染した割合はわずか1・4%だったと報告されました。
今年2月にオランダの研究者が発表した論文では、イベントの禁止は感染拡大抑止に有効である一方、飲食店を閉める効果は限定的と結論づけています。
また、3月に発行された科学誌『ネイチャー』の論文では、感染リスクは飲食店そのものではなく、あくまでも屋内空間にあるとしています」
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はこう明かしながら、お酒を提供する飲食店を厳しく規制する根拠はないと断言する。

コロナ禍で3回目の発出となった緊急事態宣言は、6月21日に9都道府県で解除された。だが、飲酒の機会はいまだに「飲食店で19時まで」「滞在時間は90分以内」などと厳しい自粛が求められており、実質的な「禁酒」状態は続いている。
飲酒についてはドタバタ劇もあり、東京五輪・パラリンピック組織委員会は、22日までは競技会場内での酒類販売を認める方針だったが、世論の批判を浴び、23日には、その方針を撤回した。
この騒動からもわかるように、日本のコロナ対策はやたらと「酒」ばかりに焦点が当てられ、「酒さえ禁じておけば万事解決」という風潮がある。
すべては五輪のために―。「禁酒」をすればコロナは収まる、「禁酒」さえすれば五輪に向けた感染対策になる。政府や東京都は、そう決めつけて強行開催にひた走る。
しかし、果たしてそうだろうか?