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「観光客は“おまけ”」沖縄ブルーシールが密かに進めていた「ウチナーンチュシフト」の真相

観光需要に大きく依存している沖縄経済にとって、長引くコロナ禍は大きな影を落としている。アイスクリームの製造販売で知られる老舗企業「ブルーシール」も、19年から20年かけて7億5000万円の減収を余儀なくされたのは〈【前編】「観光客さえ相手にすればいい」コロナで売上7億5000万円が消えた沖縄「ブルーシール」の大誤算〉でもお伝えしたとおりだ。
観光客のことを頭から捨て去らなければ、新しい物事も考えられない。「観光バブル」が弾けたあとに同社が選んだのは、観光客を“おまけ”と見なす施策だった。
ブルーシールが大きく舵を切った「ウチナーンチュシフト」の実態にライターの伏見学氏が迫った。

ブルーシールの力だと勘違いしていた

沖縄が発令した緊急事態宣言の1回目は、2020年4月20日。期限となる5月14日までは那覇をはじめとする街中にほとんど人の姿は見られなかったという。まだ「巣ごもり需要」もなく、4〜6月ごろのブルーシールの売上は目も当てられないほど絶望的な数字が並んだ。

その後、政府の国内旅行支援策「Go To トラベル」が始まったことや、沖縄には行けないがブルーシールのアイスを食べたいという県外の消費者から、同社のオンラインショップや「ふるさと納税」経由での注文が急増するなどして、多少は売上の改善が見られるようになった。

 

9月になると、山本隆二社長(当時は専務、今年3月30日から現職)がサッポログループからの出向でブルーシールにやってきた。山本社長は14年〜18年度末までポッカサッポロ北海道の社長を務め、本来ならば競合である北海道キリンビバレッジとともに炭酸飲料の販売促進に取り組むなど、さまざまな施策によってマーケットを盛り上げてきた実績を持つ。

ブルーシールに入社して早々、すぐさまテコ入れしたい気持ちはあったものの、コロナ禍で自由な行動ができないことに歯痒さを感じていた。

「取引先にも挨拶回りできないし、社員にも会えません。沖縄に来てしばらくは孤独の日々でした」と山本社長は振り返る。

結局、業績低迷を挽回することは叶わず、7億5000万円の減収を計上したのはすでに述べた通りだ。しかし、怪我の功名で、コロナがブルーシールの事業再建に向けたヒントを与えてくれることとなる。

コロナで明白になったのは、観光需要に目がくらみ、足元が見えていなかったこと。すなわち、地元顧客に対する取り組みが疎かになっていたのだ。

主にアジアからのインバウンドもあって、沖縄を訪れる観光客数は急増していた(19年9月、筆者撮影)

「沖縄に観光客が増えたのはブルーシールの力ではないのに、勘違いしていたのです。観光産業成長のおこぼれにあずかり、沖縄で長年商売をしていたブルーシールの価値も上がっていっただけ。本来気付くところを莫大な観光客の数が本質を見えなくしていました。大いに反省すべきです」と山本社長は吐露する。

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