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未知の天体発見! 謎の天体現象「高速電波バースト」をご存じか?

諸説乱立する「謎の天体」の正体は?

宇宙にはさまざまな爆発現象が存在します! 

そのなかでも、近年発見されたばかりの謎の天体現象が「高速電波バースト」です。
「爆発」というユニークな観点から宇宙を語りつくした新刊『爆発する宇宙』から、この「高速電波バースト」について、今わかっていることを一部編集のうえでお届けします。

謎の電波バーストの衝撃

あれは2010年頃だったと思うが、ガンマ線バーストの謎の解明もだいぶ進んだなと感じていた頃のことである。大学院生と酒を飲んでいて、いろいろと研究のことを話していた。そこで私はこのような発言をした。

「僕は君たちがちょっと気の毒に思うことがある。僕が大学院生の頃、ガンマ線バーストは距離すらまったく不明の、謎の天体だった。今の天文学では残念ながら、そこまで心惹かれるような謎の天体はないかもしれないね」。

その時は、とくに誰からも異論は出なかったのだが、この発言は私の思い上がりだったようで、ほどなく宇宙から鉄槌が下ることになった。

2013年の春、私は東大の天文学教室で、突発天体の論文紹介ゼミに出席していた。そこで紹介されたのが、米国のサイエンス誌に掲載されたばかりの、謎の突発電波バースト天体の発見についての論文であった。オーストラリアのシドニーから西に300キロメートルほどの場所にある、パークス天文台の巨大電波望遠鏡でパルサーを見つけるべくサーベイ(掃天観測)をしていたところ、一瞬だけ電波で光って消えてしまった奇妙なバースト天体を4つ見つけたというのだ。使用した電波は1000メガヘルツ付近の極超短波と呼ばれるもので、電子レンジや、UHFのテレビ電波、携帯電話、無線LAN、GPSなど我々がふだんお世話になっている通信用の電波としてもおなじみの周波数帯である。

パークス天文台の電波望遠鏡(S.Amy,CSIRO)
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この天体現象で注目すべきはその継続時間である。どれも、わずか数ミリ秒(ミリ秒は1000分の1秒)ほどしか光っていない。ガンマ線バーストの場合、短い種族のなかでさらにもっとも短いものでも100ミリ秒ほどは続くから、それに比べても桁違いに短い突発現象といえる。

高速電波バーストのシグナルの分散効果 (縦軸:振動数、横軸:到着時間で、パルスが、 低振動数ほど遅れていることが見られる)
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発見者らは、この現象に「fast radio burst (FRB)」という名前をつけた。日本語では、高速電波バーストと訳すのが自然だろう。この場合、fastは速く運動するという意味ではなく、「短時間で終わる」という意味である。日本語で「高速」と書くと、高速で運動するというイメージを持つ方が多いらしく、この訳語はよくないのではないかという意見も聞く。だが、「速い」という言葉は元々、「仕事が速い」など、短時間で終わるという意味であり、運動速度が「速い」というのは、移動するのに短時間で済むということだ。「高速」という単語になると、高速道路などの言葉が浮かんで「移動速度が大きい」という意味を思い浮かべるのかもしれないが、「高速処理」「高速計算」では、むろん、短時間で済むという意味だ。原語のニュアンスを残した素直な訳語としては、やはり「高速電波バースト」がよかろう。

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