マンガ/伊藤理佐 文/FRaUweb

カレーは何肉で作りますか

突然だが、みなさんはカレーは何肉で作るだろうか。チキン? ポーク? ビーフ? それともシーフード? 
スパイスカレー全盛の今、サバカレーとか野菜とか、本当に様々なカレーが普通に食卓にのぼるようになってきているが、それでも「うちの定番のカレーはこれ」というものは存在するのではないだろうか。

Photo by iStock

しかしこの世の中、なにかと「豚肉より牛肉の方が偉い」と思われがちな状況はないだろうか。

理由はもちろん、単価の高さであろう。お店によって異なるけれど、ある肉屋で見たところ、豚コマなら100グラムあたり120円で、牛切り落としになると480円。高級和牛は500円以上だった。

しかし、高級なもの=その人にとって美味しいとは必ずしもいえないのではないか。
それを考えさせてくれるのが伊藤理佐さんの名作漫画『おいピータン!!』2巻3話の「豚肉」である。

-AD-

牛肉みたいに美味しいんだもん

「おいピータン!!」シリーズは、現在は『おいおいピータン!!』と名前を変えて「Kiss」で20年以上連載されているオムニバスショートコメディで、講談社漫画賞少女マンガ部門や手塚治虫文化賞短編賞などを受賞している。「食べる」ことを中心に、人生様々な「あるある」を描き出し、笑いながらちょっと胸がチクッとしたり、目から鱗の気づきを得たりすることができる傑作ショートコメディだ。

「豚肉」は「おいピータン!!」シリーズの主人公・大森さんと渡辺さんカップルの物語。商店街のくじ引きで5等のティッシュを引いた渡辺さんが、1等のハワイ旅行当選者に、かつて好きだった男性の名前を見つけるところから物語が始まる。
同姓同名かもしれないけれど、その彼にかつて渡辺さんはふられてしまったらしい。

そんな切ない思い出がよみがえり、夕食のカレーを食べながらも、ちょっと元気が出ず、ぼうっとしている渡辺さんのことを気にかける大森さん。つい渡辺さんは過去のほろ苦い思い出を話し始める。
背が高くて髪が剛毛でビシッとしている渡辺さんだが、小柄で髪の毛がふわふわしている可愛い女の子と比べられてふられてしまったということを。
そう、まるで、豚肉よりも牛肉の方がいい、と言わんばかりに。

(c)伊藤理佐/講談社『おいピータン!!』2巻

その話を聞いてムッとする大森さん。あ、昔好きだった人のこと言われても気持ちよくないよね……と慌てた渡辺さんは、大森さんが作ってくれたカレーを食べて言う。

「ねえねえ、ビーフカレーお代わりしていい?」
「ポークだってば!」
「ご、ごめん、だってこのカレーおいしくて…牛肉みたいにおいしいんだもん、この豚肉

そこで大森さんは、猛烈抗議をする。しかし豚を牛に間違えられたことや、昔好きだった人の話をしたことに怒ったからではない。その猛烈抗議の理由を聞くと、その視点に胸がつかまれる。そして、「牛肉だからおいしい」「小柄だから好き」「くじ引き5等だから悲しい」とは限らないことを、教えてくれるのである。

あなたにとって一番美味しいのは、果たしてどんな肉だろうか。