物事の判断基準に「反日か親日か」を持ち出す人の恐ろしい思考回路

この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体8
「匿名の悪意」の被害はもう止められないのか?
ネットに吹き荒れる誹謗中傷、国民を見殺しにする政府や権力者、強気を助け弱気を挫くメディアの病巣、日本の歪な現実の病巣を、いまもっとも硬派な論客、青木理氏(ジャーナリスト)と安田浩一氏(ノンフィクションライター)が語り尽くした+α新書『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』から、短期集中連載!

無責任とメンツによるその場しのぎ

青木 先日、東京新聞で長く防衛問題を取材してきた半田滋さんと対談する機会があって、いろいろと興味深い話を聞かせてもらいました(この対談は『時代の異端者たち』所収)。僕は防衛問題にあまりくわしくないのですが、半田さんによると、海兵隊の基地である普天間飛行場なんてさっさと返還させて、空軍の嘉手納基地と統合するのが一番合理的だというんですね。嘉手納は米軍にとって東アジア最大級の空軍基地で、3500メートル以上の滑走路を2本も擁している。

普天間基地の様子 Photo by GettyImages
 

ところが、海軍から分派した海兵隊と空軍はマインドがまったく違うものだから、空軍が日本の外務省とタッグを組んで統合案を潰してしまったというんです。一方の海兵隊も空軍に頭を下げるなんてごめんだから、自前の基地である普天間飛行場は手放したくない。ただ、その代わりに日本政府が新たな基地をつくってくれるというなら願ってもない話。辺野古の新基地建設はそういうことにすぎないんじゃないかと半田さんは言うんです。

安田 米軍の居心地のよさを追求して基地がつくられているという倒錯ですね。

青木 ええ。そうして日本政府は辺野古の海への土砂投入を強行しています。でも、果たして辺野古の新基地など本当に作れるのか。安田さんもよくご存知のとおり、日本政府の見積もりでも完成は2030以降にずれ込み、総工費はすでに当初計画の3倍近い約1兆円に膨れあがっている。これが沖縄県の試算では、じつに2兆5000億円に達するのではないかとみられています。

実際、埋め立て予定地の海底には広範囲な軟弱地盤の存在も明らかになっていますから、おそらく沖縄県の試算のほうが現実に近いでしょう。いや、沖縄県の試算だって甘いぐらいかもしれない。マヨネーズ状と評される軟弱地盤は最深90メートルにも及ぶことが判明していて、過去にそんな埋め立て工事をした経験もなく、機材すらない。そして何よりも沖縄の民意は圧倒的反対なわけですから、こんな基地は完成しない、できないだろうと断言してもいいのではないかと僕は思っています。

つまり、完成の目算などないまま強引に埋め立て工事だけを続けているのが現状に近い。そこから透けて見えるのは米国の顔色をひたすらうかがい、とりあえず現在をやりすごせばいいという政権と官僚の刹那的な無責任体質と、一度決めたことは後戻りできないという政治のメンツと官僚的硬直性。負けがわかっていて無茶な戦争に突き進み、負けが確定した後もずるずるとやめられず甚大な被害を出した先の大戦とも相似形です。歴史に学ぶ姿勢が根本から欠如した無謀な政治が、口先では勇ましいことを吠えながら真のリアリズムも喪失させて破滅へと突き進む構図です。

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