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沖縄やLGBT差別を「どっちもどっち」で片付けたがるメディアの罪

この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体7
「匿名の悪意」の被害はもう止められないのか?
ネットに吹き荒れる誹謗中傷、国民を見殺しにする政府や権力者、強気を助け弱気を挫くメディアの病巣、日本の歪な現実の病巣を、いまもっとも硬派な論客、青木理氏(ジャーナリスト)と安田浩一氏(ノンフィクションライター)が語り尽くした+α新書『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』から、短期集中連載!

「土人」発言の深層

青木 自らの加害性を自覚するのはたしかにしんどい作業です。歴史を真摯に振り返り、その歴史を自身の身に引きつけて考えなければいけないわけですから。

安田 そう、その歴史を身に引きつけない作法を、メディアが増幅してしまっている感もあります。

2016年、沖縄県・高江の米軍ヘリパッド建設現場で「土人発言」がありました。大阪府警から派遣されていた機動隊員が、抗議運動をする市民に向かって「この支那人が」「この土人が」と発言して問題になった。

2016年の沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設反対運動の様子 Photo by GettyImages

あれは罵倒を投げつけた相手が芥川賞作家の目取真俊さんだったわけですが、あの事件があった翌日、僕はたまたま別件で沖縄にいたんですよ。高江じゃなくて那覇にいたんだけれど、それを知ったAbema TVのスタッフが、現地からレポートしてくれと言ってきた。

僕は高江に行く時間もなかったから断ったんだけど、コメントでいいから何かくれと言う。しかも、スマホを使って、自分で放映しろと言うわけです。

僕はそういうことはできないのでやり方を教えてもらって、結局、夜にホテルの部屋に帰ってスマホを通して出演しました。僕はそのとき高江に行ってなかったし、新聞報道以外のことは知らなかったんだけれども、「土人」発言についてどう思うかをその場で喋ったんです。

それまで高江には何度も足を運んでいます。高江がどういう場所であるかを簡単に説明した後で、これは明確に差別であると言いました。

機動隊員がどんな意図をもって言おうが、どんな思いを抱えていようが、これは差別以外の何物でもないことを前提としなければならない、と訴えました。そのうえで、高江がどんな歴史を背負ってきたのかについて話しました。

高江を含む北部訓練場って、いまもそうだけど、米軍の「ジャングル戦闘訓練センター」が正式名称ですよね。ベトナム戦争当時は、ゲリラ戦を想定した訓練が行われていました。

当時は、高江の集落のなかにベトナムの田舎を模した家を何軒も建てて、地元の人がベトナム人役として雇用されたわけです。つまり役者として、ベトナム人のゲリラ役を演じさせられた。その人たちは撃たれるわけじゃないけれど、そういうかたちでベトナムの村を再現して、米兵たちは訓練をした。

 

そのとき、ベトナム人役の地元の人は、「土人」扱いされるんです。「土人」って、スラングで「GOOK」と言うんですが、まさにその名称で呼ばれる。そういった歴史を抱えた高江という場所で「土人」と言ったことが、まず問題とされなければならない。

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