「遅れた国」韓国の巻き返しにいら立つネトウヨと、女子高生のバトル

この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体6
青木 理, 安田 浩一

下から見上げて差別

青木 つまり政治やメディアのレベルとか、あるいはオッサン的な心性のネトウヨ連中は韓国を罵り、しばしば居丈高にふんぞり返ったりするけれど、K-POPやファッションなどを入り口にして韓国エンタメに親しむ若年層や女性たちにはまた別の空気が流れている。それもオッサン的な心性のネトウヨを苛立たせるんでしょうね。

BTS Photo by GettyImages

しかも最近はその韓国エンタメが世界中でも大人気でしょう。BTS(防弾少年団)は米ビルボード・チャートのトップを快走し、安田さんがあげた映画『パラサイト』は米アカデミー賞をはじめとする国際的な賞を総なめにした。韓国社会にもさまざまな矛盾や格差が渦巻いているけれど、余裕を失って不安感や焦燥感が蔓延する日本側には、かつて「遅れた国」ととらえていた韓国の躍進への嫉妬のようなものもあって、巷のヘイト言説の周辺にはそれが濃厚に漂っている。

安田 それはいまに始まったことではなくて、日韓ワールドカップのあとにNHKが「冬のソナタ」を放映し、韓流ドラマ・ブームがはじまるわけですが、初期の韓流ファンは中高齢女性が中心でした。その潮流に対する反発は、僕が取材したネトウヨにはものすごく強くありました。つまり、NHKや地上波のフジテレビが重要な時間帯に韓国ドラマを当て込むのが許せないというわけです

その反発と差別意識が暴発したのは、2011年の反フジテレビ騒動ですよね。俳優の高岡蒼甫(現・高岡蒼佑)がフジは「韓国のTV局か」みたいな、要は韓国に乗っ取られたという意味のことをSNSに投稿して、そこにネトウヨを中心とした嫌韓層が同調した。

フジテレビ抗議デモと銘打った集まりを取材しましたが、東京・お台場のフジテレビに6500人集まった。6500人がフジテレビを取り囲んで、「韓流ドラマはいらない」とシュプレヒコールを繰り返している。そして彼ら彼女らは、日本のテレビ局が韓国に奪われたと主張するわけです。バカバカしいけど一種の喪失感を見た気もしました。当然そこにはヘイトな主張も混ざっているわけです

青木 旧来の偏見や差別に加えて近親憎悪や不安感、喪失感が相まっている複合症状。安田さんの話をうかがっていると、近年の日本に広がるヘイト的な風潮もやはり、トランプを支持するアメリカの現象などと相似形の面がありますね。過度な新自由主義とグローバリズムなどの煽りを受けて没落した中間層が深い喪失感を抱き、将来が見通せない不安感や焦燥感も手伝って「アメリカを再び偉大に」と叫ぶトランプのようなポピュリストにすがってしまう。その周囲には反知性主義や陰謀論なども渦巻いている。

同様に日本で蔓延するヘイト言説も、かつてのような上から見下しての差別や偏見だけでなく、まさに下から見上げての差別もあって、喪失感や不安感が排外主義に結びついている。いわば喪失感や不安感を埋め合わせるために。それを正当化する「在日特権」などというのは妄想にすぎないけれど、この点も反知性主義や陰謀論と通底します。

 

安田 彼らからすると韓国は自分たちが上から見下して差別する対象というよりも、韓国によって奪われる一方の日本という現状認識なんです。テレビも奪われた、と。象徴的なプラカードは「フジテレビはサザエさんだけやってればいい」みたいなものでした。

つまり、韓国にテレビの帯枠を与えるなということを必死に主張していた。差別を土台とした「危機感」が、あそこまで人を集めたと思うし、各地で反対運動が盛り上がったのも事実だと思います。そのころから、韓流ドラマをはじめ、韓流とされるものに対するアンチテーゼの動きは強くありました。

もちろんいまもある。BTSとか、K-POPのコンサートにネトウヨが押しかけることもある。武道館とかだと、入り口あたりに日章旗を持った連中がいました。

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