自民党が臆面もなく、差別を助長するようになったキッカケは秋葉原にあり!?

この国を覆う憎悪と嘲笑と濁流の正体4
「匿名の悪意」の被害はもう止められないのか?
ネットに吹き荒れる誹謗中傷、国民を見殺しにする政府や権力者、強気を助け弱気を挫くメディアの病巣、日本の歪な現実の病巣を、いまもっとも硬派な論客、青木理氏(ジャーナリスト)と安田浩一氏(ノンフィクションライター)が語り尽くした+α新書『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』から、短期集中連載!

自民党が決定的に変質した光景

安田 拉致問題以降、自民党が変質していった過程への青木さんの分析はとても興味深いものでした(前回記事参照)。僕は永田町にはくわしくないんだけど、ただ、僕が自民党を見ていて決定的に風景が変わったなと思ったのは2012年。もちろんそれまでにも青木さんが話されたような紆余曲折はあって、2002年以降は安倍的な価値観に支配されていくのだけれど、僕にとって非常にわかりやすいかたちで自民党の変化を意識したのは、2012年末の衆院選挙戦の最終日、いわゆるマイク納めの日だったんです。

2012年衆院選挙選の安倍晋三氏の様子

マイク納めというのは、それまでは新宿とか渋谷とか池袋といった大ターミナルでやるのが慣例でした。ところが2012年は秋葉原で行われました。僕はそれを見に行ったわけですね。これまで何度も、自民党の最後のお願いというマイクパフォーマンスを見てきたんだけど、それと秋葉原はまったく違う雰囲気なわけですよ。

まず聴衆に日の丸の小旗を配布しているんです。それをやっているのは、自民党のネットサポータークラブ、J-NSCや若手党員。それで、夜7時くらいに自民党の大型バスが安倍を連れてくるんだけれど、その前に都議あたりが演説しているわけですよね。

その際にメディアがカメラの場所とかをキープするわけ。そこで、「カメラこっち」とか「マイクこっち」とか言って移動している報道陣に向けて、一斉に、罵声が飛ばされたんです。

「マスゴミ帰れ」と。とくに槍玉に上がったのは朝日や毎日、TBSで、「出てけ、出てけ」という声が見事なまでに湧き上がる。だれかが指揮をとっているわけではなく、自然発生的に聞こえたんだけど、「毎日帰れ」「朝日帰れ」「TBS帰れ」と、延々とシュプレヒコールが繰り返される。これは、それまでなかった光景だったと思います。

以降すべての国政選挙戦は最終日が秋葉原なんですよ。自民党本部には遊説局という部署があって、僕は取材したことがあります。「なぜ秋葉原なんですか」と聞いてみたんですね。

そもそものきっかけは、2012年9月に自民党総裁選があって、そのときに立会演説会を秋葉原でやってみたら思いのほか反応が良く、「オレ達の太郎!」という看板ができたりして、めちゃくちゃ人が集まってきた。秋葉原にはオタクが多いとかネトウヨが多いという意味ではなく、ただ親和性が高いというか、そういう人が集まりやすい環境があったというわけです。

それで、総裁選が秋葉原で盛り上がったから、2012年の衆院選のマイク納めも秋葉原でやってみたらということになったらしい。するとやはり想像以上に人が集まって熱狂したから、これはいけると思ったそうです。

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