家族が勤務する建物に飛行機が突っ込む――そんなことを考えたことはあるだろうか。2001年9月11日、ニューヨークとペンタゴンで起きたアメリカ同時多発テロ。富士銀行に勤務していた杉山陽一さんは、9時3分に飛行機が突っ込んだワールドトレードセンターのサウスタワーが勤務地だった。このテロ事件で、日本人24人を含む約3000人が亡くなり、6000人もの負傷者が出たと発表されている。

あの日から20年になる今年。決して忘れてはならないと、20年を振り返る陽一さんの妻・晴美さんの連載第3回は、3歳と1歳の男児、そしてお腹の中に4カ月の子供がいる状態で現実と向き合っていくさまをお伝えする。

3回の前編では、行方不明の陽一さんを探し続けていた妻の晴美さんだが、無理がたたったのか、胎盤剥離をおこし、絶対安静を余儀なくされた時のことをお伝えした。トイレにすらいけない入院先で晴美さんが決意したのは、「子供たちを守るために生きる」ということ、そして「生きるのなら楽しく明るく生きる」ということだった。後編では、そう決意した晴美さんが、さらに陽一さんの現状を確認し、友人たちに報告したメールをそのままお届けする。アメリカ同時多発テロという痛ましいテロ事件に限らず、大きな問題に直面した時にどうしたらいいのか。どう生きていくのか。考えさせられるメールである。

ニュージャージーの自宅で子供達をプールで遊ばせる陽一さん。この日が最後のプールとなってしまった 写真提供/杉山晴美
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優しさはどんな悲惨な状況も飛び越える

【9月23日、友人たちに送ったメールより】

励ましのメール本当にありがとうございます。
皆様の温かいお心遣いは、海を越えわたしの心をあたたかくやさしく包みこみ、しっかりと支えてくれています。主人もきっと同じ気持ちでいるとわたしは信じています。

人の優しい心はどんな悲惨な実情の中でも、どんなに遠く離れていても、すべてを飛び越えられるものなのだと、今あらためて実感し、心より心より皆様にお礼申し上げます。

本来お一人お一人に返信すべきところなのでありますが、ここ1週間パソコンをゆっくり開けていられる状態ではなかったため、こういう形を取らせていただくことをどうかお許し下さい。
その代わりといえるかわかりませんが、主人の安否、そしてわたしや子供たちの身体のことを本当に心配してくださっている皆様に、こちらでの主人の最新情報、そしてわたしたち家族の現状をご報告させていただきます。

まず、主人のほうの状況でありますが……日本でもかなり細かい情報をマスコミ、ウェブサイト等で入手されていることとは思いますが、2、3ご紹介いたします。

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