ネトウヨ的発言に簡単に毒され、ヘイトを広げるのは“普通の人”

この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体2
「匿名の悪意」の被害はもう止められないのか?
ネットに吹き荒れる誹謗中傷、国民を見殺しにする政府や権力者、強気を助け弱気を挫くメディアの病巣、日本の歪な現実の病巣を、いまもっとも硬派な論客、青木理氏(ジャーナリスト)と安田浩一氏(ノンフィクションライター)が語り尽くした+α新書『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』から、短期集中連載!

山口組系右翼団体までが動員された

青木 要するに排外主義的な嫌韓ムードなどが背景にあり、「税金を使った『反日』は許さない」というロジックを前面に押し出してリコール運動が展開されているということですか。ならば大村知事にしてみればとばっちりかもしれない(前記事参照)。

安田 そう思いますね。ただ、庶民派を気取る河村のめちゃくちゃな演説のほうが一部の人々の琴線に触れるという面もあるわけです。そういう意味では河村はこの問題でも、一定程度の支持は集めるのかなという気がしなくもない。

安田浩一氏 撮影/西﨑進也

ただ、彼らの運動は決して盛り上がっているようには見えなかったし、いま彼らの運動の手足となって動いているのは、はっきり言ってネトウヨですから。僕なんかが講演をやると必ず押しかけてくるネトウヨ軍団が、名古屋市内でも日章旗とか旭日旗を立てて側面支援をしています。また、名古屋には弘道会という山口組当代組長を輩出しているヤクザ組織があるんだけど、同会とも深いつながりを持つ司政会議という右翼団体がある。司政の「司」は司忍六代目山口組組長の司です。その司政会議という弘道会系の右翼団体なんかが、隊服を背広に着替えて、署名を呼びかけている。強面だからすぐにわかるんですけれど、そういう人まで動員せざるをえないほど、この運動が極端なものになっているのは間違いない。

 

青木 リコール運動の広告塔になった面々を眺めてもそれは明らかですよね。百田尚樹とか明治天皇の玄孫だとか、それに『週刊新潮』のデスクだった……。

安田 門田隆将さん。あの人、昔からあんな感じでしたっけ?

青木 僕は新宿ゴールデン街あたりで顔を合わせれば話す程度で、仕事上のつきあいはなかったからくわしく知りませんが、当時はあそこまでネトウヨ的な言動ではなかった印象です。

安田 僕が『週刊宝石』を辞めてあちこちの週刊誌で記者をやっている時期に、一時期『週刊新潮』にも出入りしていて、そのときのデスクが門田さんだった。一緒に「『裁判官』がおかしい!」という取材をやったこともあるんです。裁判官が不当な判決を出すのが許せないという立場で、冤罪事件を取材した。

青木 安田さんが一緒に仕事をしたんですか。あの記事はたしか書籍化されていますね。『裁判官が日本を滅ぼす』(新潮文庫、2005年)でしたっけ。

安田 ええ、僕の名前も出てます。

青木 つまり、取材してデスクに情報をあげるデータマン的なことを?

安田 そうです。『週刊新潮』の記者の名刺を貰ってやっていました。『週刊新潮』が冤罪の取材というのが意外で、「新潮がこういうことやるんですね」なんて言っていました。あれはなかなかハードな取材で、冤罪と思われる人に有罪判決を出した裁判官のところにずっと張り込んで、夜帰ってきたときに当てて「あんた、あんな判決出して恥ずかしくないのか」みたいな取材をやっていた。

関連記事