2021.07.06
# 野球

大谷翔平はもはや「ブーム」でなく「現象」だ…! 米記者たちが明かす“本当の評価”

永塚 和志 プロフィール

大谷の活躍は米スポーツにとっての新風

もっとも、ルース以来の特異な存在である大谷の活躍はそうした野球の置かれる状況とは一線を画し、新鮮な風をアメリカのスポーツ界に吹き込んでいると言えるのではないか。

それは例えば、NBAのケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)やNFLのJJ・ワット(アリゾナ・カーディナルス)といったそれぞれのリーグを代表するスーパースターがツイッターなどのSNSで大谷の凄さに舌を巻くコメントをしていることでもわかる。

大谷の及ぼしている衝撃についてのアメリカの記事等を見ていても“transcend”という単語が目に付く。transcendとは「超越する」という意味だが、大谷が野球、もっといえばスポーツというジャンルを超越した比類なき存在であるということの証左である。

photo by gettyimages
 

メジャー専門局の「MLBネットワーク」の番組でも、ケン・ローゼンサルという著名なレポーターが大谷を「野球を超越した選手で、私にとって彼は“The Today Show”で取り上げられるような存在です」と、少年のような興奮した口ぶりで話していた。

The Today Show(正式にはToday)は1950年代から米ネットワークのNBCで放映されている有名な、朝の情報・ニュース番組だ。ローゼンサル氏はつまり、スポーツ番組のみならず全米で流れるこういった有名番組でも大谷が語られるべきなのだと主張したのだ。

有名な非スポーツ番組という点では、大谷には渡米前にその経験がすでにあった。NBCと同じくメジャーネットワークのCBSのドキュメンタリー番組“60 Minutes”が2017年、遠く日本まで取材クルーを送り込んで、まだ北海道日本ハムファイターズ在籍時の大谷を紹介している。今年の大谷の活躍で、同局はその回を最近、再放送したと聞く。

「野球に関心のない人の関心を引いているということで、大谷の名前は間違いなくニュース界隈を賑わせているよ」

ロサンゼルス周辺の新聞グループで野球記者を務め、スポーツ番組への出演もこなすJP・ホーンストラ氏はそう話す。

1995年に野茂英雄氏(元ロサンゼルス・ロジャース等)がメジャーデビューし、フォークボールで相手を三振の山に切って取ったことでやはり衝撃をもたらしたが、ホーンストラ氏は大谷が野茂氏とは異質の形で人々の目を野球に向けさせていると、ウィットを込めて言う。

「野茂は打ってないからね」

野茂氏の話を続けると、彼がメジャーに渡る前年の1994年、メジャー機構側と選手会側の労使協定が締結に至らず、同年の8月から選手側がストライキに入り、シーズンがそこで終わってしまうという事態があった。ストライキは95年の4月に終わったが、そのことで大きなファン離れを引き起こしている。

そこに野茂という物珍しいトルネード投法をたずさえた東洋からの投手が来て活躍したお陰で傷口が抑えられたと、当時のコミッショナーだったバド・セリグ氏他、多数に言わしめた。

今の大谷の活躍によって沸き起こっている熱は、野茂氏が当時もたらしたものに近いのではないかとも思えるが、現地のジャーナリストたちは大谷の作り出しているそれは野茂のものとはまた別種のものであると口を揃える。

「二刀流で活躍をする大谷の価値は野茂のものとはまた別の次元のところにある。野茂もアメリカの野球をアジアに目を向けさせたという点では偉大だったけど、何しろ大谷の比較対象はあのベーブ・ルースであって、だからこそ皆、彼から目が離せないんだ」

スポーツサイト「Deadspin」でメジャーリーグを始め多くの記事を執筆してきたベテラン記者のジェシー・スペクター氏はそう話した。

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