野球人気は下降傾向?
では、関係者やファン以外での「大谷」の人気はどれほどのものなのだろうか。これを測るのは簡単ではない。というのも野球が、あるいは日本人の多くが思うほど人気のある競技ではないからだ。
正確には人気のある競技では「なくなってきている」と言うべきかもしれない。この10年から20年ほどで、少なくともテレビコンテンツとしての野球の人気は下降傾向にあるからだ。
米調査会社のギャラップ社が1900年代前半から長らく「観るのが好きなスポーツ」を、数年に1度の頻度で調査している。それによると「1930年代」から「1960年代から70年代」に差し掛かるあたりまでは、野球はアメリカで最も人気のあるスポーツだった。数字にすれば、30~40%が野球を観るのが一番好きであると回答していたのだ。
ところが、その地位は現在ではアメリカンフットボール(NFL)によって取って代わられて、約4割がこれを支持している。それに次ぐのがバスケットボール(NBA)で、近々の17年の調査では11%となっており、野球はわずか9%となっている。
ワールドシリーズのテレビ視聴率も、ここ数年はNFLのレギュラーシーズンのそれに負けているのが現状だ。
世間一般に浸透している野球選手も年々減っている。ESPNが世界のアスリートの人気ランキング・トップ100という企画を掲載している。クリスティアーノ・ロナウド(1位)やレブロン・ジェームズ(2位)、ロジャー・フェデラー(6位)といったサッカーやNBA、テニス選手の名前が多く並ぶ中で、野球選手は99位のブライス・ハーパーだけだ。

もっとも、この人気の下落も見方による。視聴率こそ落ちてきているが実際に球場へ足を運ぶファンの数は約3万人前後で推移している。このあたりは地上波での放映頻度が下がった日本と似ているところがある。
メジャーが個々のスター選手を売り出すことに苦戦しているのは間違いないが、名のあるスーパースターが減ったことイコール人気が落ちたということにはならない。野球をテレビで観戦する人が減ってきた、というのが正鵠を射ているかもしれない。
野球をプレイする子どもたちの数についても21世紀に入って減少したと言われるが、これを危惧したコミッショナーのロブ・マンフレッドによるイニシアチブでメジャーとアメリカ野球協会が連携し、若い世代に野球に触れてもらう機会を増やすプログラムを打ち出している。
これが奏功し、ここ数年は競技人口が盛り返しているというから、最悪の時期は脱しかけているようにも見受けられる。