すべて丸投げしていたのが間違いだった
「家計を管理していた妻が、私の知らないうちに退職金1000万円を投資信託につぎ込んでおり、なかにはFXなど、ギャンブル性の高い商品もありました。その事実を知らされたのは、コロナ禍で相場が暴落したタイミングでした」
妻曰く、馴染みの銀行員に勧められるがまま、次々に商品を買い足してしまったということだった。老人ホームの入居金に充てる予定だった500万円が入った口座にも手を付け、大半を失っていた。
「元はといえば銀行に勧められた商品です。窓口に文句を言いに行きましたが相手にされませんでした。おカネのことをすべて妻に丸投げしていたのが、間違いでした」
子安さん夫婦のように、退職金や相続財産といったまとまったおカネが入ってくると、慣れない投資に手を出してしまう人は後を絶たない。経済コラムニストの大江英樹氏は語る。
「そもそも、スーパーで10円でも安いセール品を買うような『おカネに執着心がある人』は投資に向きません。おカネが減ってしまうリスクがあるということを受け入れ、10~20年という長期で考えられる人以外は、下手な投資をしないほうがいい」
一方、銀行や証券会社は老後資金を少しでも増やしたいという人を虎視眈々と狙っている。ファイナンシャルプランナーの半田典久氏は語る。
「私は金融機関からの営業電話が来たら、5秒で切るようにアドバイスしています。『お身体の調子はどうですか』という日常会話をしているうちに、銀行側が売りたい、手数料の高い商品を買うように巧みに誘導されるからです」