2021.07.03
# 医療

悲願「アルツハイマー型認知症新薬」、日本人はまだまだ知らない「理想」と「現実」

認知症の一種であるアルツハイマー病の治療薬アデュカヌマブが、アメリカ食品医薬品局(FDA)の製造承認を取得したニュースが話題沸騰だ。新薬開発が難しいとされてきたアルツハイマー病の治療薬ということで期待が高まる一方で、専門家の間では過度な期待に懸念を示す人は少なくない。アデュカヌマブは「夢の新薬」となるのか――。そのリアルな最前線を、ジャーナリストの村上和巳氏が徹底レポートする。

アルツハイマー病の薬開発が「困難」なワケ

そもそも、なぜアルツハイマー病の新薬開発が困難なのか。

それは端的に言うと原因が完全には特定されていないからである。現時点でアルツハイマー病の原因は「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれるタンパク質が脳内に異常蓄積し、神経細胞を死滅させることで起きるとの仮説が最有力視されている。

これはアルツハイマー病の進行とともに、患者の脳内にこれらのタンパク質の蓄積が進むため、「原因ではないか」と推定されているに過ぎない。

別の見方をすれば、原因は全く違うもので、これらのタンパク質の蓄積は、その結果併発的に起こっている可能性も否定できない。「鶏と卵」の関係でいえば、アルツハイマー病でのアミロイドβやタウは、現時点では鶏なのか卵なのかがわからないのである。

アルツハイマー病の解明は続いている photo/iStock
 

もっとも原因が完全に特定できなくとも、有効な新薬の開発が可能な場合はある。

代表例が一般的によく知られている高血圧症である。高血圧症の約9割は、医学的に本態性高血圧症と称される原因不明のものである。

にもかかわらず日本国内では高血圧症の薬は軽く20種類以上ある。新薬候補となる化合物で血圧という明確な数値を低下させられれば良いからだ。いわば結果オーライである。

しかし、アルツハイマー病は、診断の時点で高血圧症のような明確な指標はない。

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