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機関銃を抱えた「ママ」の大芝居――家族愛を描いたB級ギャング映画

若かりし頃のデ・ニーロの怪演!
犯罪の先頭に立ち、徹底したアナーキーぶりで息子たちを叱咤激励する母親。ボガートとラフトの友情が凝縮した銀行強盗ギャングの最期――B級ギャング映画のなかで、「家族」はどのように描かれてきたのか?
巨匠・筒井康隆が、映画全盛期につくり出された活劇映画の魅力と溢れるヒューマニティを痛快に描きつくした新刊『活劇映画と家族』から、映画「血まみれギャングママ」と「前科者」の母性愛、兄弟愛について論じた箇所を抜粋して公開します!

実在した強盗団の母親

例えばロジャー・コーマン監督「血まみれギャングママ」では、ギャング役の4人の息子の母親がまだ50歳のシェリー・ウインタースであり、肉感的な色気と、それによる迫力で息子たちを性的にも支配している。

本来は美人女優であるシェリー・ウインタースであればこそ、「白熱」のマーと違って、女の魅力も兼ね備えた、動物的な、母性愛の強い母親となり得ているのだ。やはり母親が一人前になった息子を支配するには、母乳の匂いのする肉体が必要ではないかと思わされる。

「血まみれギャングママ」は、実在した強盗団の母親、「マ」・ケイト・バーカーを題材にしている。「マ」や「マー」は俗称で、「母ちゃん」。このケイトの生い立ちについては、敬虔なキリスト教徒の一家に生まれたとも、父と兄から性的暴行を受けたとも言われているが、まあ両方の説は相反するものでもあるまい。

映画では冒頭、父と兄から受けた性的暴力のせいで自分の産んだ子供たちだけをまるで呪いにかかったように、異常に愛するようになったことになっている。

息子たちの名前は実録だと長男ハーマン、次男ロイド、三男アーサー、四男フレッドとなっているが、映画では凶暴性のある長男がハーマンで、次男フレッドが同性愛者、実録から得たのか三男アーサーが異様に信心深いという設定だ。

ロバート・デ・ニーロの役作り

映画ではロイドになっている四男を演じているのがまだ人気の出ない頃のロバート・デ・ニーロであり、これはドラッグ中毒になっていて、湖岸の向こう岸から泳いできた娘を相手にとんでもない怪演をするから面白い。

英語で書かれた解説では、出演を決めたシェリー・ウインタースがロジャー・コーマンのキャスト探しを手伝い、ブライアン・デ・パルマの低予算映画に出ていたロバート・デ・ニーロのビデオをコーマンに見せ、使うように説得したのだという。

コーマンは悪名高い「マ」・ケイト・バーカー役にはオスカー女優のシェリー・ウインタースしかいないと心に決めていたそうだ。

また、推薦されたデ・ニーロも、「彼のキャリアの初期の段階でさえ自分の出演作品に対する献身は明らかで、彼はクルーよりも先にロケ地のアーカンソー州に行ってその地域を見てまわり、アクセントに取り組んだ。ニューヨーク生まれのデ・ニーロがとても上手な南部訛りで話すので、コーマンが他の出演者たちへの方言指導を頼んだ」ほどであったらしい。

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