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“ウソつきのクレタ人”のパラドクスが本当はパラドクスではない理由

論理力を鍛える名作論理パズル

数学の巨人・オイラーやルイス・キャロルといった数々の偉人たちも、論理パズルを楽しみ、数々の名問を生み出してきました。

この記事ではもっとも有名な論理パズルのひとつ「ウソつきのクレタ人」と、これに関連する2つの問題をご紹介します。頭の体操にチャレンジしてみてください!

(本記事は『論理パズル100 世界の名作から現代の良問まで』の内容を再構成したものです)

論理パズル誕生!

論理パズルはエピメニデス(紀元前600年頃の預言者・哲学者)のパラドクスから始まりました。このパラドクスは,むかしから現代まで,多くの人を悩ませ(それが彼を殺した,というようなことが碑文に書かれている人すらいるそうで),パラドクスとしては非常に有名なものの1つです。もっとも,「これはじつはパラドクスではない」ということもまた有名です。

問題1—— エピメニデスのパラドクス

論理パズルはエピメニデスのパラドクスから始まりました。それは通常,以下の形で書かれています。

クレタ人のエピメニデスが言いました。「クレタ人はみなウソつきだ」

「ウソつき」を「つねにウソをつく人(真実ではないことをつねに言う人)」とすると,上記の発言から導ける結論は?

(注)これはエピメニデスの詩「クレタ島(Cretica)」の1行から来ていて,その英語訳は以下のとおりです。

Cretans, always liars, evil beasts, idle bellies

直訳すると「クレタ人,つねにウソつきで,邪悪な獣で,怠惰な腹」
(最後の部分は「怠惰な大食らい」とできますが,そうすると詩らしくなくなるので,直訳のままとしておきましょう)

エピメニデスは,知者(賢人)とみなされていました。家や畑を浄めたり,神殿を建てたりした最初の人であったと言われています。[ディオゲネス・ラエルティオスによる]

クレタ島は地中海に浮かぶ美しい島 Photo by iStock

解答1

「クレタ人はみなウソつき」であるとすると,エピメニデスの発言は真実であることになり,エピメニデスはクレタ人でありながら真実を述べていることになってしまって矛盾。

ゆえに,「クレタ人はみなウソつき」はウソ。したがって,「クレタ人の中には真実を述べる人がいる」となり,また,エピメニデス(クレタ人)はウソをついているので,結局,「クレタ人の中には,ウソつきもいれば,真実を述べる人もいる」ということになります。

なお,「『クレタ人はみなウソつき』がウソなら『クレタ人はみな真実を述べる』ということになる」と,非常に多くの人が間違えます。そのように誤解すると,エピメニデスはクレタ人でありながらウソを述べていることになってしまって矛盾で,結局,「クレタ人はみなウソつき」は,真実でもウソでもないことになり,パラドクスとなってしまいます。

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