世界記録は31兆桁! 日本人も活躍する円周率「π」計算の最先端

『円周率πの世界』5
柳谷 晃 プロフィール

数学史上に輝く年

数学史において、1985年は注目する結果が出た年です。前回の記事〈どこまでも終わらない挑戦…コンピュータによる円周率計算の歴史〉でも述べたように、ラマヌジャンが得たπの近似式を使って、実際にπの近似値が求められました。ラマヌジャンの予想が正しかったことが判明したのです。

ラマヌジャンの近似式で計算したのは、世界的なハッカーとしても知られているウィリアム・ゴスパーです。1752万6200桁まで計算しました。当時はまだ、ラマヌジャンの式の数学的な証明はできていませんでした。すなわち、それに依拠するゴスパーの結果は、正しいかどうかが判定できないことになります。

しかし、ゴスパーの結果は、それまでに得られているπの近似値と一致していました。つまり、ゴスパーの計算は、ラマヌジャンの結果が正しかったことを実験的に確かめるものとなったのです。

10億桁を競い合う

1989年には、米国のエンジニアで数学者、チュドノフスキー兄弟と、金田康正・田村良明とのあいだで、πの近似値競争が繰り広げられました。まず、5月にチュドノフスキー兄弟が4億8000万桁まで計算すると、7月には金田と田村によって5億3687万898桁まで求められました。

翌8月にチュドノフスキー兄弟が10億1119万6691桁まで計算して再度、日本チームを追い抜くと、こんどは11月に金田・田村ペアが10億7374万1799桁まで計算して巻き返したのです。

一方、翌1990 年には、前出のパソコンの達人・若松登志樹が、ふたたび記録を伸ばします。富士通のパソコンFMTOWNSとステルメルの公式を使って、100万118桁まで計算しました。ステルメルの公式は、次のとおりです。

π/4 = 6 arctan(1/8) + 2 arctan(1/57) + arctan(1/239)

πの近似公式は、この後も発見・改良されていきます。コンピュータの能力が発展するとともに、近似公式の改良で、πの近似値は文字どおり桁外れに進歩していきます。

1994年には、日本の金田・田村ペアと熾烈なπの近似値競争をしていたチュドノフスキー兄弟によって、次の級数が発見されました。

チュドノフスキー兄弟が発見した級数

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