2001年9月11日、ニューヨークとペンタゴンで起きたアメリカ同時多発テロ事件から、今年で20年になる。

マンハッタン区のロウワー・マンハッタンに位置する「ワールドトレードセンター」は、7つのビルの総称で、中でも110階建ての2棟「ワールド1」と呼ばれるノースタワーと、「ワールド2」と呼ばれるサウスタワーは大手金融機関などの集まるオフィスビルとして多くの人々が勤務していた。NYは世界中から多くの人たちが集まる街。もちろん、日本人も多くいた。

ボストン発ロサンゼルス行きアメリカン航空11便がハイジャックされ、ワールド1に飛び込んだのは9月11日、午前8時46分のこと。そして、同じくハイジャックされたボストン発ロサンゼルス行ユナイテッド航空175便は、午前9時3分にサウスタワーに突入した。このテロ事件で、日本人24人を含む約3000人が亡くなり、負傷者は6000人以上とされている。

信じがたい光景が現実のものとなったPhoto by Getty Images

杉山晴美さんの夫の陽一さんは、当時の富士銀行(現・みずほ銀行)に勤務していた。そしてこのテロ事件に巻き込まれた。当時杉山夫妻の間にはふたりの幼い男の子と、晴美さんのお腹の中にもう一人の男の子がいた。あの日、なにがあったのか。そして20年どのように生きてきたのか。杉山さんの著書で当時ドラマ化もされた『天に上った命、地に舞い降りた命』の再編集と、晴美さんの書きおろしにより、「911からの20年」を振り返る。第1回の前編は、「あの日」当日のことをお届けする。

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「無事でいて!早く逃げて!」

【9月11日】
2001年9月11日火曜日、それはごくありふれた朝。あまりにありふれていて、思い返しても予感めいたものは何ひとつ思い当たらず、だからよけいにいまも大それた事件を実感しきれずにいる。

アメリカ東部ニュージャージー州。マンハッタンとはハドソン川をはさんだ対岸、ジョージ・ワシントン・ブリッジのたもとに位置する。2000年、紅葉の美しい時期に、私たち家族は、夫・杉山陽一の富士銀行ニューヨーク支店勤務のため、息子二人を連れて越してきた。

大学3学年下の後輩である夫と結婚し、もうすぐ10年を迎える。長男太一は3歳、次男力斗は1歳とすくすく育ち、お腹の中には小さな命がいた。夏場つわりに悩まされていたものの、翌日からは妊娠4ヵ月目に入る。

陽一さんのNY赴任後、晴美さんの母がNYに来た時にワールドトレードセンターを訪れ、家族で撮影した写真 写真提供/杉山晴美

ニュージャージーはすっかり秋めいていきた。この日の朝も空は気持ちよく晴れ渡り、さわやかな秋風が窓から吹き込み、気分は爽快。これなら妊娠もそろそろ安定してくるかな、と思っていた。