「病名伝えるべきか…」 AYA世代のがん経験者が就活で感じた“本音”

がんをありのままに伝えられる社会へ
松井 基浩 プロフィール

当事者と社会の距離を縮める

AYA世代がん患者が就職活動をするとき、当事者自身のがんに対する意識の違いによる就職活動への影響は大きいだろう。

Aさんのようにがんを経験した自分をアピールするという意識変容が良い役割を果たすかもしれないし、それは、がん患者自身が不安を整理することにもなる。また、がんの経験を自身が話すことで、面接官にがんへの正しい理解を促すことにもつながるだろう。

ただ、一方でどうしてもがんを経験したことを積極的に伝えられない人がいるのも事実だ。特に、治療中に就職活動をする場合である。Bさんも病名を隠すか隠さないか苦悩した結果、病名を伝えることができなかった。その根底には、がんと伝えたことで、マイナスにとらえられるのではないか、面接官に傷つくことを言われるのではないかという不安がある。この不安を抱えないようにするにはどうしたらよいのか。

必要なのは、がん患者自身と社会が互いの方向を向き、理解しあえる距離感まで歩みを進めることだ。

がん患者自身はがんを経験した中で、就職活動に向き合い一歩を踏み出したこと、そしてその一歩を踏み出すまでに相当な決断や覚悟が必要であったこと、そのことに、まず自信を持ってほしいと思う。自信をもって臨んだ先に、社会の理解も加われば、自身のがんを正しく伝えることができるのではないだろうか。

一方、社会(具体的に就労の場合では面接官)には、がんへの正しい理解を深めて、個人個人のがんが異なること、一人ひとりと向き合うことを知ってほしい。社会の中にはびこる、就職活動をするがん患者への間違った理解、つまり一方的に、かつ一括りにして「体力がない」、「休みがちになる」、「再発する」などのマイナスイメージだけを持たないでほしい。

がん経験者一人ひとりで状況は異なっている。イメージだけではなく一人の受験者として向きあってほしい。そして、がんのマイナスイメージだけでなく、がんを経験した中で就職に向き合っていることの凄さにも目を向けてほしい。

がんという困難と向き合い、社会復帰しようと考えたそのエネルギーは並大抵なものではない。がんという病気を受け入れ、副作用に耐えながら治療を乗り越え、その間に生じた体力低下や体の不調と付き合い、治療の間に生まれた社会との遅れに気後れしそうになりながらも、働くという新たな一歩を踏み出していく。その一歩を踏み出せたことの凄さは想像に難くない。

 

また、別な角度からの支援として、第三者による就労支援も進んできている。ハローワーク飯田橋において、がん経験者の就労時の不安や悩みを相談できる窓口も存在している。

がん治療の改善とともに、がんとともに生きる時間が長くなってきている。国のがん対策では、がんと共生していく世の中を掲げている。一人ひとり、違った生き方、選択があっていい。

「多様」なAYA世代がん経験者が、新規就労に挑むとき、がんを経験したことを偏見としてとらえるのではなく、一人の受験者として公平に、能力を評価できる社会となることを望む。そして、AYA世代のがん患者が自信をもって、就職面接で自分のがんについて話すことができる社会となって欲しいと思う。

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