「病名伝えるべきか…」 AYA世代のがん経験者が就活で感じた“本音”

がんをありのままに伝えられる社会へ
松井 基浩 プロフィール

しかし、当時のAさんの職歴は新卒入社から退職までの期間が短く、「根性のない若者」と誤解されるおそれがあり、誤解を解くためには「がん」であったことをカミングアウトする必要があった。

Aさんはなかなか自分自身をうまく説明することができず、それにより自信を失い、自己PRができないという負の連鎖に陥ってしまった。しかしそのような状況でも諦めまいと、面接で質問された時にがんのことと現状について冷静に説明するようになった。現在は回復していることとがんを乗り越えたことのポジティブなアピールにもつなげた。このように面接をしたところ、その場で内定を貰い、社会復帰を果たすことができた。

Aさんは当時を振り返り、自分ががん患者であるというネガティブな自意識が強過ぎたため、自分を売り込むことができなかっただけだったと語る。Aさんの次の言葉が印象的だった。

「そもそも会社側も病気の人を雇わないという決まりがあったわけではなく、活躍してくれる人材かどうかを知りたかっただけです。病気を抱えて働けるかどうかを決めるのは患者であった私だったのだと思います」(Aさん)

 

そうは言っても後遺症と向き合いながら働くことの難しさは非常に厳しい。Aさんの場合、上司や同僚とのランチや飲み会、他社の社員と食事をすることが多くあった。しかしAさんは胃を摘出しているため、一般の人の何倍も食べ物を良く噛んでから飲み込まないと、消化器への負担が著しく増えてしまい、強い眩暈や動悸に苦しむこともあった。

この様に書くと物凄くしんどい様に聞こえるかもしれないが、Aさん自身は若くしてがんになったけれど環境に恵まれたおかげで働くことまでできているという、その幸せな気持ちの方が圧倒的に強いと語る。

「ネガティブな自意識や社会の固定概念というものは極力なくした方が良いように思います。がんと仕事についても同様で、患者側もネガティブな自意識は持たず、自分ができることを前向きにアピールし、会社側も固定概念は決して持たず、どんな仕事を期待できるかで評価をする、そういった姿勢は働く側にも雇う側にも必要なことかと思っています」(Aさん)

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