「病名伝えるべきか…」 AYA世代のがん経験者が就活で感じた“本音”

がんをありのままに伝えられる社会へ

AYA世代のがん経験者の困難

AYA(Adolescent and Young Adult)世代は、15歳から39歳の世代を指す。競泳の池江璃花子選手が白血病を患ったことなどで報道が過熱したが、実は、日本においてこの「AYA世代」でがんに罹患する人は年間約2万人と言われている。

写真はイメージ/photo by iStock

AYA世代は就学、就労、恋愛、結婚などの多くのライフイベントのある年代だ。この間にがんに罹患することで、当事者たちは様々なライフイベントとがん治療との両立を求められ、多くの社会的困難を抱える。

また、AYA世代のがんは「年代」と「がん」という二つの共通点で括られた概念ではあるが、年齢、病名、治療法、家族背景、仕事など、それぞれ背景が異なり、一人ひとりが抱える困難は違っている。

そのため、一人の経験を一般化できないことがAYA世代の特徴であり、AYA世代のがん一人ひとりの「多様性」が最大の特徴である。

中でもこの世代のがん患者や経験者にとって重要な問題の1つが「就労」だ。就職活動の際に、病名を伝えるか、伝えないかという問題に多くのAYA世代がん経験者が直面する。

世間一般にがんの理解が少しずつ進んだことで、がん患者の新規就職での困難は少しずつ改善してきているが、まだまだ根深い問題が残っている。今回は病名を伝えて就職したAさんと病名を伝えずに就職したBさんのエピソードから、その困難について考えていきたい。

 

就職活動で病名を告げるまでの道のり

Aさんは現在33歳の男性会社員だ。23歳の7月に胃がんと診断され、胃の全摘出手術と抗がん剤治療を経験した。幸い手術は成功し、転移などもなかったが、当時新卒で入社したIT企業を手術のため入社3か月で休職、その翌年3月には自ら退職した。社会人経験がまだ浅い中で、後遺症を抱え、復職して社会復帰をする自信が全く持てなかったからだ。

退職後は実家で療養とリハビリだけの生活を約1年間続けることになる。当時はうどんを1本食べるだけで満腹になってしまうような状況だったので、外食にも行けず社会との関わりはほぼ絶っていた。

その後、書店でのアルバイト経験を積み、2年が経過した頃、通院での検査を終えて術後3年経過で異常はなく、再発率も下がってきたため、もう一度正社員として社会復帰を目指すことにした。

関連記事