多くの人が知らない…教育の「格差」と向き合う〈しんどい学校〉の先生の「仕事」

中村 瑛仁 プロフィール

校区のSESによって教師の役割は異なる

日本の先生の仕事を概観しましたが、これはあくまで全体平均の話です。実は教師の仕事や求められる役割は、学校によって異なります。特に注目したいのが「教育格差」との関係です。

教育社会学者の松岡亮二氏は、家庭や地域といった初期条件である”生まれ”によって、学力や最終学歴に差がある状態を「教育格差」と呼んでいます*4

日本でも小学校の段階で、すでに保護者の学歴や居住地域によって学力差が生まれていること、またその学力差は学校教育を通じて縮小しないことなどが様々なデータから示されています。

 

ここでは保護者の学歴や世帯収入など、子どもの出身家庭の社会経済的地位(Socio-economic status:以下SES)に注目します。実は公立の小・中学校であっても校区のSESが厳しい学校と、そうでない学校とでグラデーションがあります。

図3は、教師からみた自身の学級の生徒の特徴を聞いたものです(中学校教師が回答)*5。校区のSESとの関係をみるために、学級における「社会経済的に困難な家庭環境の子どもの割合(SES Low)」別に、各特徴の生徒の割合を示しています。

例えば、SES Lowが「0%」の学級=家庭背景の厳しい子どもがほぼいない学校では、学業成績が低い子どもは学級のなかで約12%ですが、SES Lowが「31%以上」の学級=家庭背景の厳しい子どもがかなり在籍する学校では、39%いることになります。

この傾向は「問題行動を起こす生徒」「特別な支援を要する生徒」「母語が日本語ではない生徒」でも同様です。いずれも校区のSESが厳しいほど、様々な課題を抱える子どもが学級の中で多くなっていくことがわかります*6

この数値はあくまで教師の認知件数ですが、ここでお伝えしたいのは校区のSESによって学級で求められる教師の役割が異なるということです。

簡単にいえば、校区のSESが厳しい学校では、様々な課題を抱える子どもが多くなり、教師はそうした子どもと信頼関係を築いたり、子どもの課題に対応したりすることが求められます。注目したいのは、受験選抜が行われる前の小学校・中学校の段階であっても、学校間には無視できない違いがあるということです。

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