セクシャルマイノリティのために歌ってるんじゃない

紅白の直後に受けたインタビューでは、繰り返し「中村さんと似たような経験をした人からも、たくさん共感を得ていると思います」といわれたという。

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その頃はすでに表に出ている自分は自分ではないような感覚だったというか、“共感”と言われても、実感がありませんでした。 

実際に手紙をもらったときや、CDの即売会などで直接感想を受け取れるタイミングで『あなたの存在に救われた』と言ってくださる人もいました。そのときは『ありがとう。でも歌をきっかけにして、頑張ろうと思えたのはあなたの力だから、あなたが凄いんだからね』と伝えるようにしていました。本当にそう思っているからです。
 
それよりも、雑誌やTVでも随分と簡単に“共感”という言葉を使うなぁと思っていて。身近な人間の無理解に苦しんでいる最中に聞く、“共感”と言う言葉が、なんのことを言っているのかわからなくなってしまって……。インタビュー中に『共感されたくないんですよね』と応えたら、当時のマネージャーに『あんなこといっちゃだめだ!』と怒られました。
 
私は別に、同じ立場の人に勇気を与えるために紅白に出たわけではないです。紅白出場後の番組でも、事前打ち合わせで『“セクシュアルマイノリティに勇気を与えるために歌っている”みたいないい方は、私の気持ちとは違うので絶対やめてくださいね』とお伝えしていたにもかかわらず、本番でそっくりそのまま質問してくる人もいました。でも、当時は生放送で瞬時に上手く切り返すことも出来なくて、歯切れの悪い発言しか出来ませんでした。悔しい。私はただ、歌う人間として紅白に出場したかっただけなのに……」

撮影/渞忠之