【田房永子×清田隆之のジェンダー対談 #1】

共にジェンダーに関する書籍を執筆している、漫画家でエッセイストの田房永子さんと、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さん。昨年、田房さんはフェミニズム、清田さんは男性性をテーマとする書籍を上梓したが、二人はその中で生きづらさの根にあるものについて、言葉は違えど、ある共通する概念で語っていた。

女性の生きづらさと男性の生きづらさ。それぞれの視点から辿り着いた気づきについて語り合ってもらった。

(構成:清田隆之

子育てをきっかけに気づいた、社会のA面とB面

清田:ここ数年、自分の中で「doing/being」という概念がとても重要なテーマになっていて、昨年の夏に出版した『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)でも繰り返し紹介しました。これは元々大学の恩師から教わったもので、人にはdoing(行為・する)とbeing(存在・ある)のふたつの側面があり、この視点を導入すると自分や社会のことがクリアに見えてくるかも……という話なんですね。そしてこれは田房さんの本や漫画に出てくる「A面/B面」という概念とも大部分で重なっていて。

田房:私も清田さんから「doing/being」の話を聞いたとき、「まったく同じこと言ってる!」って思いました。そういう言葉があるんだなって。

清田:田房さんとは長い付き合いで、雑談レベルでは度々この話をしてきたけど、一度これをテーマにじっくり話してみたいなと思ったのが今回のきっかけです。まずはそれぞれの言葉を簡単に説明できたらと思うのだけど、「A面/B面」とはどういうものでしょう。

田房:これは個人的な実感から生まれた造語なんだけど、この社会にはA面とB面のふたつがあると感じていて。会社や学校、政治経済、時間通りに来る電車など、ルールとかシステムみたいなものが関わっていて、ある程度コントロールできるものはすべてA面のもの。一方、例えば命や育児、病や天災など、人間にはどうしようもできないもので構成された世界がB面という感じです。

上野千鶴子・田房永子『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』P75より引用
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清田:田房さんはどうしてこのような考え方をするようになったんですか?

田房:妊娠してから、駅の優先エレベーターを初めて対象者として使ったときに景色がガラリと変わったんです。それまで優先対象者ではないのに何度か、何も考えないで乗ってしまっていたときもあった。だけど対象者になったとき、優先エレベーターに乗らないと移動できない人たちの逼迫した状況が一気に肌身で分かるようになったんですね。

高齢者、車いすユーザー、ベビーカー、ヘルプマークユーザー、妊婦など、それぞれの優先対象者がさらに譲り合って利用していることも知った。駅の景色はそれまでとまったく同じなのに、今まで見えなかった世界がいきなり見えるようになったのが衝撃でした。世の中には、自分が今まで見ていた世界(A面)と見えるようになった世界(B面)の2つがあるんだ、と思うようになって、それぞれに名前をA面B面と名前を付けました。