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バビロニア、エジプト、江戸の人々はどのように円周率を計算していたのか

『円周率πの世界』3

世の中には、ふしぎな魅力で人を惹きつける「数」や「図形」が存在します。なかでも古くから人類を魅惑し続けてきたのは「π」と「円」ではないでしょうか。そこには、どんな数学的な秘密が隠されているのか……話題の新刊『円周率πの世界——数学を進化させた「魅惑の数」のすべて』の内容を短期連載で紹介いたします。

バビロニアのπ

世界で初めて文字を使いはじめたといわれるバビロニアでは、πをどのような数で表していたのでしょうか。発掘されたバビロニアの粘土版には、円の円周と円に内接する正六角形のまわりの長さとの比が書かれています。

円の半径を r とすると、内接する正六角形のまわりの長さは 6r です。この程度のことは、高度に進歩していたバビロニアの数学レベルでは当然わかっていました。円のまわりの長さ、すなわち円周は 2πr です。60進法を使っていたバビロニアの人たちがつくった比は、

6r : 2πr = 3 : π= 57/60¹ + 36/60²

でした。この書き方は、いまではあまり使われませんが、a : b は、a の b に対する比、すなわち a/b のことです。つまり、上の比は、

3/π= 57/60¹ + 36/60²

という式を表しています。

この式の右辺を計算してみると。

57/60¹ + 36/60² = 24/25

となります。よって、

π= 3×25/24 = 25/8 = 3 + 1/8

となります。

この値を見て、何か気がついた人はいらっしゃいますか? どこかで見た値ではないですか。

そうです、前回の記事で、ひもを使って直径と円周を比べたときの、小さいほうの分数を使った円周率の値になっています(《“棒”と“ひも”を使った円周率のかんたんな測り方》参照)。つまり、実際の円周率より少し小さい値です。バビロニアの人たちがなぜ、この値を使っていたかはわかっていませんが、

3 + 1/8 =3.125

ですから、土地などの大きさを測るには十分な精度でした。古代バビロニアの人たちは、天文にも造詣が深かったことで知られていますが、小数点以下第2 位より下の正確な値は必要とはしなかったようです。先ほどの粘土版には、土地の広さと税金の資料などが記されていますが、その目的のためには、この程度の精度で十分だったのでしょう。

商取引の記録が記されているとされる粘土版 Photo by gettyimages

バビロニアで計算されていた数学は、幾何や、方程式を解く代数などの、純然たる数学だけではありませんでした。借金返済時の利子といったような、当時の社会生活を垣間見ることのできるものも含まれています。粘土版に書き残された内容を知ると、現代人ときわめて似通った生活を送っていたことがわかります。

いまだ解読されていない粘土版が、一日も早く翻訳されるのが楽しみです。

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