2021.07.09
# 数学史

隠された黄金比、対称性……ふしぎな魅力で人を惹きつける「図形」の秘密

『円周率πの世界』1
柳谷 晃 プロフィール

正多角形と円——美しさを生み出す対称性の秘密

正五角形や正六角形などの正多角形は、「円」を利用して描くことができます。円周上の5等分、6等分した点を直線で結んでいけばいいのですからかんたんですね。このように描かれた正多角形は、いくつもの対称性をもちます。

まず、円の中心と正多角形の頂点や辺の中点を結んだ直線で二つに折ると、左右の形が重なります。つまり、「線対称」の対称性をもっているのです。円の中心と頂点や辺の中点を結んだ直線が線対称の軸となります。

正多角形はさらに、回転に関しても対称性をもっています。つまり、正多角形を中心のまわりに回転すると、元の図形と重なる角度があります。正五角形なら72度の回転、正六角形なら60度の回転で、元の図形と重なります。「回転対称」の対称性をもっているわけです。

このような対称性を、完璧といっていいほど備えている図形が身近にあるのですが、わかりますか?

——そう、「円」です。

円は、すべての直径が線対称の軸になっているため、無限個の線対称の軸があります。さらに、円を中心のまわりに回せば、どの角度でも(どんな回転でも)元の円の上に重なるので、対称となる回転の角度も無限に存在します。人間が古来、この形に特別な感覚を抱いてきたことも、決してふしぎではありません。

加えて、円という図形は、昔から私たちの生活のなかできわめて役立つ形でした。その代表例が車輪です。人は紀元前5000年くらいから、重いものを動かしたり運んだりするために車輪のような輪を使ってきました。

もう一つの例が土器です。土器の多くは、その断面に円の形を見ることができます。断面が円に近い器はいくつも出土しており、製作するうえでも、日常的に使用するうえでも便利な形であったことが想像されます。現在の私たちが使う器やコップも、その断面のほとんどは円形ですね。

円は歴史的に、美しく、かつ役に立つ形として認識されてきました。そして、その円と切っても切れない関係にあるのが、円周率πです。次回から、その円と円周率について、詳しく見ていきましょう。

(次回、《“棒”と“ひも”を使った円周率のかんたんな測り方…人類と「π」の出会い》は7月11日公開です)

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