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隠された黄金比、対称性……ふしぎな魅力で人を惹きつける「図形」の秘密

『円周率πの世界』1

世の中には、ふしぎな魅力で人を惹きつける「数」や「図形」が存在します。なかでも古くから人類を魅惑し続けてきたのは「π」と「円」ではないでしょうか。そこには、どんな数学的な秘密が隠されているのか……話題の新刊『円周率πの世界——数学を進化させた「魅惑の数」のすべて』の内容を短期連載で紹介いたします。

五芒星とダビデの星

数学に登場する理論や公式、定理などは、必ずしも現実に役に立つとは限りません。ところが数字の「7」のように、役に立つかどうかとは関係なく、なにかふしぎな魅力で人を惹きつける数があります。

同じように、人間の関心を惹きつけるものの一つに、「形」、つまり図形があります。図形にもいろいろありますが、それらのなかに、なぜか私たちに神秘さを感じさせるものが含まれているのです。そのような図形は昔から、どこかふしぎな魅力を放つものとして、日常生活の身近なものや大切なものの形に使われてきました。

なかには、ある地域で使われている図形が、遠く離れた別の地域でも使われているケースがあります。たとえば、「五芒星(ごぼうせい)」ともよばれる、正五角形の対角線からつくられる星の形が挙げられます。

五芒星は、日本では平安時代の陰陽師(おんみょうじ)・安倍晴明(あべのせいめい)の家紋として使われたことで知られ、「晴明桔梗(ききょう)」ともよばれています。これと同じ図形が、現在の中東地域にかつて存在していた国でも「ソロモンの星」の名称で使われていました。ソロモンの星は古来、魔除けになると信じられてきたといいます。正五角形の対角線からできた星の形が、国境を越えて多くの人たちを惹きつけてきたようです。

正多角形の対角線からできる星の形を使った有名な図形が、もう一つあります。「ダビデの星」です。ダビデの星は正六角形の対角線からつくられる星の形で、イスラエルの国旗にも描かれています。

五芒星に現れる「黄金分割」

五芒星(ソロモンの星)やダビデの星が、日常のデザインとして使われたのはなぜでしょうか? 私たち人間が古来、それらの形を「美しく整ったものである」と認識してきたからでしょう。

ではなぜ、それらの形を「美しく整ったものである」ととらえてきたのか。前述のとおり、どちらの図形も、正多角形の対角線からつくられます。特に五芒星は、正五角形の対角線からつくられる図形であるため、対角線の中に「黄金分割」が現れます。

黄金分割とは、次のような比率です。

1 : (1+√5) / 2

五芒星を形成する正五角形の対角線は、線分中の一つの交点によって二つの長さに分けられますが、その二つの長さの比が、じつは、黄金分割の比率になっているのです。

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