コロナ禍が可視化したニーズにも対応
いちばんの変化は、「ウインドウの並べ方を簡単に再配置できる」ようになったことだ。

PCの利点は、複数のアプリを同時に使えることだ。ビデオ会議をしながらメモやウェブブラウザーを開く、といったことは、コロナ禍において特に増えた作業の1つだが、そのたびにウインドウを並べ直すのは案外、手間のかかる面倒な作業だった。
だが、Windows 11では、そうしたことをワンタッチでおこなえる。アプリをグループにして、「以前の並び方」にワンクリックで戻すことも可能になった。
「タスクを切り替える」といえば、従来はアプリを1つずつ切り替えることを指していたが、Windows 11では「仕事に使う、いま開いているアプリ群とそのウインドウの並び方」を切り替えることに意味が変わったのだ。
また、ノートPCに外部ディスプレイをつないで使うときなどには、「つなぐ前」と「つないだ後」のレイアウトを記憶してくれており、つなぐたびにウインドウを並べ直す必要もなくなる。
こうしたことは、じつは「以前から不便だったこと」ではある。しかし、コロナ禍でビデオ会議が増え、PCで複数のアプリを開きつつ作業する機会が増えたことで、多くのユーザーが明瞭に意識するようになった現象でもあり、Windows 11はこの点に的確に対応してきたといえるだろう。
OSに組み込まれるTeams
ウインドウの再配置機能と同様に、コロナ禍でのPCの使われ方の変化を反映し、大きく変わった部分がある。
──「ビデオ会議アプリであるTeamsをOSに組み込んだ」ことだ。


「Microsoft Teams」は、コロナ禍でビデオ会議が増えたことによって利用者が急増したサービスだ。Zoomなどとの競合もあってか、マイクロソフトはこの1年、驚くほどの勢いでTeamsに対する機能追加・改善に取り組んできた。ビジネス向けのイメージが強いが、先ごろ「家庭向け」の機能も多数リリースしている。
一方で、すでに多くの人が使っているにもかかわらず、Teamsは「独立したアプリ」「独立したサービス」という位置付けにとどまっていた。加えて、マイクロソフトがもつもう1つの通話サービスである「Skype」とのすみ分けもはっきりしなかった。
Windows 11からは、その点が明確に変わる。OSにTeamsが組み込まれ、すぐに通話できる「基本サービス」へと変更されるからだ。
もちろん、他のプラットフォームにおける位置付けは変わらない。アップルやGoogleなどの他社プラットフォームでは、アプリやウェブブラウザーからいままでどおりに使用可能だ。
これにより、WindowsユーザーにとってTeamsは、名実ともに「最も身近なコミュニケーションツール」となる。
一方で、同じような位置付けのアプリとして、アップルは「FaceTime」、Googleは「Google Meet」をもっており、それぞれ機能強化に力を入れている。Windows 11でのマイクロソフトの新戦略は、そうした「プラットフォーム同士での競争」が本格的に始まることも意味している。
そして、「プラットフォーム同士での競争」という観点からはもう1つ、注目すべきポイントがある。「アプリ入手のエコシステム」に変更が加えられたことだ。