万引き多発、店舗閉鎖続出で岐路に立つ「バイデンの人権擁護政策」

弱者救済か治安維持かの選択再び
安田 佐和子 プロフィール

万引きが企業経済に深刻な打撃

その傍らで軽罪に含まれる、ある犯罪の増加が企業にも大打撃を与え、深刻な社会問題と化している。それは、万引きだ。

カリフォルニア州では2014年11月に実施された住民投票「修正案47(Proposition 47、Prop-47)」の可決により、被害額が950ドル以下の場合は、軽罪に分類されるようになった。

同法が施行された効果はすぐに現れ、2016年のロサンゼルス市警での万引き報告件数は前年比で25%も増加。その後も増加の一途をたどったが、万引きが軽罪として扱われるようになってから、警察や小売業者が万引きを取り締まらなくなったことが一因とされる。最近では、サンフランシスコにあるウォルグリーンで、警備員の目の前で万引きする男性の姿を捉えた動画がCNNなどでも報じられ、話題となったものだ。

検挙件数の増加は警察の手柄になると思われがちだが、軽罪であれば人員が限られるなかで、警察も本腰を入れて対応しづらい。また、万引き件数の増加に合わせ、逮捕者を留置場に次々に送り込めば、彼らだけで満員になってしまう恐れがある。

何より、万引きの現行犯を確保した小売業者側が訴えられるケースが増加し、取り締まりそのものが及び腰とならざるを得ない事情がある。

例えば、2018年4月にはカリフォルニア州サンノゼで、小売大手ウォルマート、百貨手大手ブルーミングデール、服飾ブランドのアバクロンビー・アンド・フィッチなどが集団訴訟に直面した。警備員が万引きした者を店内で確保した際、警察に突き出す引き換えに教育関連企業が提供するオンラインでの更生プログラムの受講と、その支払いに500ドルを求めたためだ。

原告側は、更生プログラムを提供する企業に対し「長きにわたる『強要』プログラムを通じ、絶望した貧者から何百万ドルもの利益を貪っている」と訴えていた。原告団のうち、留め金を万引きしたテキサス州在住の男性は、更生プログラムの支払いができず、取り立てに遭ったという。

全米25州で更生プログラムを提供する教育関連企業で、小売業者と共に訴訟の対象となったコレクティブ・エデュケーション・カンパニー(CEC)は「2016年に、小売業者の万引き被害額は、170億ドルに及んだ」とするなど、更生プログラムの正当性を主張してきた。

しかし、2014年11月にカリフォルニア州で修正案47が可決された直後、サンフランシスコ市法務官が2015年11月に「カリフォルニア州法の下での教科書を使った強要」を行ったとして同社を提訴。結果、同州の上位裁判所は「強要行為」と認める判断を下した。この判断に基づき、2018年4月の集団訴訟に至ったとみられる。

また、インディアナ州司法長官も集団訴訟と時を同じくして、CECが提供する更生プログラムに対し「潜在的に多くの法律や倫理規定に反している可能性がある」との見解を表明。サンノゼでの集団訴訟の正当性を補強したに違いない。

 

■上位裁判所から「強要行為」の判断を勝ち取ったサンフランシスコ市法務官の声明

出所:サンフランシスコ市法務官のWebサイト

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