その土地の風土や文化を背景に、日本人ならではの器用さと繊細な感性をもって長年受け継がれてきた伝統工芸の世界。先人たちの知恵のもと、現代の暮らしに心地よく寄り添うモダンなプロダクトを生み出す逸材がいます。

「日常的な上質さ」「クラフトマンシップ」、そして「美」。まさに「JAPAN’S AUTHENTIC LUXURY」=「JAXURY(日本が誇るほんもの)」というべきものづくりに挑む、朝日焼十六世松林豊斎さんを訪ねました。

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日常の中に非日常が、
非日常の中に日常がある。

綺麗さびとは、
そんな哲学的な美が宿るもの

イギリスのリーチ窯での作陶経験ももつ朝日焼十六世松林豊斎さん。2017年にオープンしたショップ&ギャラリーには、宇治川に向けて気持ちよく開いた茶室も。

約400年前、時代が桃山から江戸に変わる慶長年間に誕生した茶陶の名家、朝日焼。茶人の小堀遠州に愛された7つの窯「遠州七窯」のひとつに数えられている。

茶碗と急須のほか、湯冷ましも宇治の煎茶には欠かせない。

「陶芸はその土地の土を使うもので、それがすべてといっても過言ではありません。器の形も、土を生かすために作るものなんです」と朝日焼十六世松林豊斎さん。

持ち手のない急須デザインは朝日焼八世長兵衛から継承。

朝日焼の特徴を表すものとして、小堀遠州が遺した「綺麗さび」という言葉がある。素朴さの中にシャイニーな美しさや品性を讃えるというそのイメージは、まるで朝日焼のショップ&ギャラリーのほとりでたゆたう宇治川のよう。

「宇治は、人間と自然のバランスがいいんです」(松林さん)

「綺麗さびはまさに宇治そのものの空気感。私もここで毎日宇治川を眺めながら作るからこそ、自然と出てくる発想はあるはずです」

親子3代の茶盌の競演。

亡父の後を継いで襲名し、今年で丸5年。試行錯誤の日々だったが、月白釉(げっぱくゆう)という美しいブルーの釉薬に魅せられて、月白釉で「綺麗」を、土で「寂び」を表現する新たな可能性にたどり着いた。

鳳凰は、平等院との関わりが深い朝日焼にとって重要なモチーフ。

「私は朝日焼の、研ぎ澄ませていったあとに少しだけ戻る、そのさじ加減が好きなんです。日常と非日常が完全に分かれることなく、日常の中に人生の豊かさがある、というような。中庸に生きていたい、と思っています」

登り窯がそびえる近くの工房には、松林さんのほか、熟練の職人たちの姿も。

昨年はコロナ禍の状況でむしろ「明るい作品を届けたい」と背中を押され、月白釉に金彩を施した新作も。「何を作りたいのかがクリアになった気がします。ようやく、これからですね」