約2年をかけてほぼ世界一周旅行した様子を綴った大ヒットエッセイ『ブラを捨て旅に出よう』の著者で、旅作家の歩りえこさんに著書では綴られていないエピソードを披露してもらっているFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。

今回は、飛行機でたまたま隣に座ったスリランカ男性との出会いがきっかけでお世話になった大家族との話。中でも印象的だった、毎日酒浸りで働かないおじさん、そして大家族の家計をたった一人で支える大黒柱たちとの思い出を振り返っていただきました。

歩さんの今までの連載はこちら▶︎

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20人の大家族、生活を支えるのは…

世界94ヵ国を旅した中でたくさんの国で居候をさせて貰った経験があるが、インド洋に浮かぶ島国のスリランカでは、飛行機で隣の席だった男性の大家族宅に2週間お世話になった。

旧首都コロンボから車で2時間、ジャングル地帯に住む大家族は総勢20人。中でも印象的だったのがアルコール依存症のおじさん・ヤパ(仮名)だ。50代、無職、今後も仕事をする気ゼロ、朝起きてから夜寝る前まで浴びるように酒を飲み続ける生活をしている。

お金はどうしているかといえば、飛行機で隣席だった大家族の大黒柱である30代で働き盛りのチャミンダ(仮名)が日本で出稼ぎした給料で、ヤパおじさんを含む家族全員の面倒をみているという。

スリランカで平均的な給料は1ヶ月で3万円ほど。日本で数年間出稼ぎしたほうが遥かに効率よく稼げるのだ。チャミンダが5年ほど日本で働いたお金で皆がのんびりと暮らしている

ジャングルの大自然の中で水浴び。写真提供/歩りえこ

子供は学校で勉強するのが仕事だし、ママは育児・家事があるのでともかく……チャミンダ以外の成人男性陣はどうしているのだろう? 居候中に観察してみると、男性陣は一日中ほぼぐうたらしていた。

ジャングルにあるこの大家族宅は完全に手作りで屋根がまだ半分しかない。だからチャミンダ以外の成人男性は屋根作りの作業をすることになっているそうだ。

朝ご飯を食べて、部屋でゴロゴロして、昼食を食べてまたゴロゴロ昼寝して、ジャングルから小さな街へと向かい食材を買いに行った後に帰ってきて夕食を食べ、再びゴロゴロした後に水浴びをして寝る。

あれ……屋根全然作ってないじゃん。「屋根はいつ完成するの?」と男性陣に聞いてみたら……『3年後くらいかな。屋根って半分無くても別に困らないから焦ってないんだよ』とのこと。作る気ゼロ。屋根が半分ないことすら誰も気にしない、大自然の中で究極のシンプルライフを送っている。

大黒柱のチャミンダが居なくなったら19人が路頭に迷うが、もしものことなんて誰も想定しておらず……すっかり彼に頼りきりの状態だ。まぁ家族だし、一家の大黒柱に頼って生活するのは東アジアあるあるかもしれないな......そう思っていたが、チャミンダに聞くと、実はこの20人は全員が血縁関係にあるわけではないと言う。

観光地キャンディにある仏歯寺。スリランカ人は敬虔な仏教徒が多い。写真提供/歩りえこ