水揚げされた直後の「キアンコウ」(山本智之撮影)

【珍問クイズ】「あんこうは深海魚ではない」は、ホント? ウソ?

9割弱の時間を過ごしていたのは…?

食用になる深海魚の名前を挙げてみてください──。

そう訊かれたら、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが「あんこう(鮟鱇)」ではないだろうか? それくらい、あんこう=深海魚というイメージが浸透している。

ところが、あんこうの名産地として知られる青森県でおこなわれた「バイオロギング調査」の結果は、意外なものだった。なんと、「あんこうは深海魚とはいえない」というのだ。いったい、どういうことなのか?

大好評をいただいている「深海魚を科学する」シリーズ。今回は、あんこうの実像に迫ってみた。

食用の「あんこう」、じつは2種類います

市場に流通し、「あんこう鍋」などの材料に使われる魚には、2つの種類がある。

1つは、「本あんこう」とよばれ、大きな個体は全長1.5m、体重40kgに達する「キアンコウ」(Lophius litulon)。そして、もう1つが、キアンコウより小ぶりで、「くつあんこう」という通称をもつ「アンコウ」(Lophiomus setigerus)だ。

キアンコウ(山本智之撮影)

キアンコウとアンコウは、外見がよく似ている。しかし、よく見ると体の特徴が異なっている。アンコウは口の中に白い斑紋があるのに対し、キアンコウは口の中が無地で斑紋がない。

また、両種とも胸びれの上方に「上膊棘(じょうはくきょく)」というトゲがあるが、アンコウはトゲの先端が枝分かれするのに対し、キアンコウは枝分かれしない。

市場ではあまり区別せずに扱われるケースもあるが、じつはこの2つの魚は、完全な別種なのである。

キアンコウの口の中は無地で、斑紋はない(山本智之撮影)

いずれもアンコウ目アンコウ科だが、キアンコウは「キアンコウ属」、アンコウは「アンコウ属」。つまり、分類上は「種」より上の「属」のレベルで異なる魚なのだ。

日本で漁獲量が多いのはキアンコウのほうだ。このため、一般に「あんこう」といえば、キアンコウを指すことが多い。また、味の面でも、アンコウよりもキアンコウのほうが良いとされている。 

「濃厚なうま味」が魅力の郷土料理

茨城県では、キアンコウが重要な観光資源になっている。

“あん肝”は「海のフォアグラ」ともよばれるが、その濃厚なうま味が存分に楽しめるのが、茨城の郷土料理である「どぶ汁」だ。もともとは漁師が船の上で食べていた料理とされ、鍋であん肝を煎(い)ってから具材を入れてつくる。

鍋には水を入れず、身肉や野菜から出る水分だけで仕立てるのが正式な調理法だ。鍋の中に溶け出した肝が、独特の深いコクを生み出す。

郷土料理の「どぶ汁」。あん肝をたっぷり使い、濃厚な味わいだ(茨城県北茨城市で、山本智之撮影)

「鮟鱇の七つ道具」という言葉があるように、あんこうは身肉や肝臓だけでなく、胃袋、卵巣、えら、ひれ、皮と可食部が多く、部位ごとに異なる食感を楽しむことができる。どぶ汁などの鍋物だけでなく、酢味噌を合わせたタレにつけて食べる「とも酢」や唐揚げなど、現地の飲食店や旅館では、キアンコウを使ったさまざまな料理が提供されている。

キアンコウをさばく際の「吊るし切り」も、観光客に人気だ。吊るし切りは、ぬめりが多く、ブヨブヨとした魚で、まな板の上でさばくのが難しいことから考え出された解体方法だ。

プロの調理師による見事な手さばきは、大勢の観客を集めたイベントなどで披露されることもある。

キアンコウの「吊るし切り」の実演(山本智之撮影)

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