東日本大震災のあとに

しかし、実は娘Nと父親T君は、今から10年ほど前に会ったことがあるのです。東日本大震災の直後でした。ふとT君は元気なのだろうかと思い出しました。それまでも年に一回くらい思い出して名前をネットで検索していたりしたのですが、その時はFacebookに見つける事ができました。震災後って一気にFacebookユーザーが増えましたよね。その時考えていたことは、「私は勝手に子供を産んで幸せに暮らしているが、彼は、どこかで自分の子供が育っていて、いつか自分の目の前に現れるかもしれないと冷や冷やして、穏やかじゃない暮らしをしていたりしないだろうか」ということでした。

検索をするとFacebookに彼を見つけた…Photo by iStock
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そこで、もう一度「本当に絶対に貴方の人生の邪魔をするようなことはしないけれど、逆に、万が一、子供に会ってみたいとか言う事があれば、そういう意思も尊重できる」と言うことを伝えようと思いました。なんとも「妊娠しました」以来のメッセージになりますが、そのことを伝えると、なんとなく会ってみたいと言う話になりました。こんなことを「なんとなく」ってありなのかと思うかもしれませんが、当然私たち二人にも経験がなく、誰にも経験がないので、明確な理由が見つからないという意味の「なんとなく」です。

そして、実際会う事になるのですが、「なんとなく」期待していたケミストリー、会った瞬間に父親とわかる! とか、やたら気が合う! みたいなこともドラマのようには起きず、娘にとってはむしろあまり楽しくない逢瀬になってしまい、また、我々が今後も会い続けるのかという問題にも向き合えず、結果、今まで通り会わないし、娘には「この人があなたの父親です」ということは言わない、という結論を出して終わってしまいました。つまり娘には「父親と会った」記憶は一切ないという事になりました。

そしてこの話は娘と実父を合わせるべきだと言ってきた彼をとても傷つけたようでした。そして、彼はとても強く次のように言ってきたのです。

「この前 、Nちゃんは父親に会ったことがあるのに、会ったことはないってナナさんは嘘ついてると言ってましたよね? それをNちゃんに言ってください」

えええ、なんで!?

この問題は「子どもの意思とは何か」という議論に発展していったのです――。

【ナナさんが彼から言われた衝撃の言葉の原因は何? そして起こした行動とは……
子が実父に会いたがらない理由はマインドコントロール?未婚の母が起こした行動」に続く】