中村繁夫[アドバンスト マテリアル ジャパン社長]54歳でリストラの危機から、レアメタルで年商340億円へ

セオリー
社長室のあちらこちらにさまざまなレアメタルが転がっている

 さらにユニークなのは、会社に出戻りができることだ。これまで3回も戻ってきた社員もいるという。それを歓迎するというのだから、懐が深い。

「帰ってくる度に大化けしてくる人がいる。成長する限り私は助けます。でも、指示待ちしているようではダメ、『人生の大河ドラマの主人公はお前やで!』と、いつも社員には口を酸っぱくして言うてるんです」

 中村氏は人を育てるには、仕事の環境づくりが大事だと考え、社員には「1日100万円までなら損してもよい」と告げているという。

「前向きの向こう傷は大歓迎です」

 出戻り自由。しかも失敗してもよい範囲が与えられている。ただし与えられた裁量に対する責任はきちんと果たさなければいけない。

 ここにルールを見つけるなら、自分の能力を活かせる環境を間違えずに選択できれば、失敗をチャンスに変えやすくなる、その可能性が高まる、ということが言える。

「生き残るのは"強さ"ではなく"環境に適応した"会社」

環境に適応すればピンチは回避できる

 AMJの標語は2008年まで「右手にソロバン、左手にロマン、背中にガマン」だった。中村氏らしいユーモアのあるスローガンだ。それが2009年から「ひっそり、こっそり、しっかり」に変わった。

「リーマン・ショックによって世の中に自粛ムードが広まり、デフレ経済になって環境がすっかり異なってしまった。こんな時期に『儲けてやる』なんて大声で言ってる奴はアホですよ。戦争なら敗走の戦いになっているわけです。だから戦い方を変えなくてはいけない。そのことを全員にわかりやすく伝え、膨張政策を止めるためには、忘れにくい標語が必要です」

 風向きが大きく変わった。ビジネスを取り巻く環境が変わった。だから標語を変えた。

「ダーウィンの進化論は会社にも当てはまる。今のような悪い経済環境の中でも生き残れるのは、強い者ではなく、環境に適した者なのです」

 他の船が大波に飲まれて沈没しても、環境に柔軟に対応できる海賊船であれば問題ない。たとえば嵐のときは潜水艦に変身してピンチを回避し、ひっそりこっそりと深海を進むという手もあるのだ。