中村繁夫[アドバンスト マテリアル ジャパン社長]54歳でリストラの危機から、レアメタルで年商340億円へ

セオリー

「大衆の生活を見て、価値観を共有するところから商売は始まる」

「どうして山師なのかといえば、確率の少ないことに賭けているように見えるから。でも、その認識は違う。

 みんながわからないだけで、その確率を常に高くしていくさまざまな努力を、裏ではものすごい勢いでやっている。実はリスク回避しているんです」

 つまり、勝てる裏づけがあるからこその挑戦ということだ。

「何の準備もせずに山登りをするのは無謀。でも、私たちはいろんな事態に備えて万全の手を打って山に登るわけです。"探検=投機"ではあるけど、"冒険=博打"ではないんです」

 興味深いのは、他人の目にはピンチに見える状況が、中村氏の目にはそう映っていないことだ。

「たとえば中国。2008年くらいから資源輸出国から輸入国に変わってきた。それで『レアメタルを売ってくれなくなった。困った、困った』という人もいるけど、何を言うてんねん。これまで売り手だった国がモノを買ってくれるお客様になる。これはチャンスやないか、と。しかも、世界でも有数の輸入大国に大転換する可能性があるのに、チャンスがゴロゴロ転がっていると何で思えないのか。ワクワクしない方が私には不思議です」

 中村氏のこの発想から、状況は変わらなくても、視点が異なればピンチはチャンスに見えるというルールが見えてくる。激しい「向かい風」も背を向ければ、一瞬にして幸運の「追い風」になる。海賊船の船長でなくても使える方法論である。

「文化が分からなければ、その国で商売なんかできません」

自身の能力を活かせる世界を見つける

 AMJには、最も成績の悪い社員が毎年一人辞める、という決まりがある。

「会社に永住することが幸せであるとは限らない。その人にはその人の適性があるわけですから。

 各自の能力は全部異なるのに、どうして小さな会社の価値観に押し込めて、『おまえは仕事ができる』とか『できない』とか言っているのか。そんな小さい話はするな! と言いたい」

 リストラされることは社員にとってピンチだ。でも、社長の助言に「気づき」を得て、自身の適性を理解し、能力を思う存分発揮できる環境に行けば新たなチャンスが広がる。

 中村氏は辞める社員に転職先を紹介することも多い。外国人の社員には日本での保証人になる。その家族どころか親戚一族郎党の保証人にもなって面倒をみてきた。一度も会ったことがなくても、だ。