中村繁夫[アドバンスト マテリアル ジャパン社長]54歳でリストラの危機から、レアメタルで年商340億円へ

セオリー

 人間は気持ちが楽になると脇が甘くなり付け入られやすくなる。実体験に裏づけられたその言葉は、説得力にあふれている。

「ところが、難しい道を選ぶと危機感を覚え、常に神経を研ぎ澄まして前進するんです。そうすると頭が活性化してくる。観察力、分析力、判断力が鍛えられるわけです。すなわち、洞察力が養われる。その結果、ベストな選択ができるようになってきました」

 難しい道を選べば、つまり自らピンチに飛びこんで行けば、洞察力が鍛えられる。さらに使っていなかった能力が開花するのでチャンスが広がる、と中村氏は実体験からルールを学んだ。

無謀な冒険ではなくリスク回避する探検

 ピンチをチャンスに変えるには、視点を変えて見ること、複数の視点をもつことが大切。中村氏の話は、そういう示唆に富んでいる。

世界中を商売で駆けめぐる中村社長は、どの国でもすぐに相手とうち解けてしまう。その原点は大学院生時代の約2年にわたる世界放浪。現地の家に上がり込み、酒を酌み交わし、その国の民謡をともに歌う。海外での商売はそこから始めるのだそうだ

「二つのことを常に考える。たとえば先にプラスを考えたら次にマイナスを考える」

 そうすると人とは異なった発想ができるようになる。また、世界が多様性に富んでいることがわかる。

「『蝶理』時代のことですが、カザフスタンのチタン工場に3億数千万円を融資するとき、役員たちは全員が反対した。

 当時、カザフは建国して間もない国だったので、取引もカントリーリスクを証明するものもない。

 そんなリスクの高い案件にお金は出せない、という理由で全員反対だったけど、私は前例がないからこそリスクを冒しても価値が高いのだ、と思った」

 視点を変えれば、マイナス要素はすべてプラス要素に反転するという一例だ。その後、この融資を会社から引き出した中村氏は、この案件で会社に7億~8億円の利益をもたらした。

 ところで、鉱山開発は「1000分の3(センミツ)の世界」と呼ばれ、成功の確率は極めて低いとされている。中村氏を「現代の山師」と呼ぶ人も多い。