2021.06.30
# 月

JAXAとトヨタがタッグを組んだ! ヒトを乗せて月面を走るクルマ“ルナ・クルーザー”

JAXA初の月面の有人モビリティ

JAXAとトヨタがタッグを組んで、月面探査のための乗り物を作っていることは、CMでも告知されているのでご存知の方も多いと思います。2020年代後半の打ち上げを目指して研究が進められているとのこと。

「いよいよ月旅行が現実になる!?」「プロジェクトの立ち上げの経緯は?」「クルマの性能は!?」など聞きたいことがたくさん。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙技術部門有人宇宙技術センター 技術領域主幹の降籏 弘城(ふりはた ひろき)さんが、お答えくださいました!

JAXA有人宇宙技術部門有人宇宙技術センター 技術領域主幹 降籏 弘城(ふりはた ひろき)さん

JAXA、トヨタとともに月面有人モビリティを研究!

──トヨタと協力して、月面を走る有人モビリティを研究中とのことですが、どのようなものか教えてください!

現在研究しているモビリティは、「ルナ・クルーザー」と命名した有人与圧ローバです。有人与圧ローバは、与圧空間(宇宙飛行士がシャツスリーブで一定期間居住可能な機能を備えた空間)を持ち、寝泊りなどの生活や、必要に応じて実験などもできます。イメージとしてはキャンピングカーが近いかもしれません。

──ものすごく頑丈そうですね! アポロ時代の小さい乗り物とは全然違います!

そうですね。アポロ時代の移動体は、バギー型で常に宇宙服を着ていなければならなかったこと、移動距離も数十キロ程度と生活拠点、研究拠点としての役割を持たない移動体で、できることが限られていました。

──ひょっとして…月面で宇宙服を脱げるんですか?

その通りです。ルナ・クルーザーは、マイクロバス2台分ほどの大きさで、2人の宇宙飛行士が『宇宙服を脱いで』滞在でき、数百キロ単位で移動が可能なモビリティです。月面を自由に移動し、滞在拠点としても活用できることから、月面探査においてさまざまな点で貢献できると考えています。

JAXAにとって初めての月面有人モビリティ

──JAXAとして月面での有人のモビリティへのチャレンジは今回が初めてというのは意外でした。

そうなんです。JAXAは、国際宇宙ステーションや衛星などの開発経験が豊富なのですが、これらは全て無重力環境で使うものです。月面は、重力(地球の六分の一)がありますし、また無重力空間にはない上下の区別もあって、これまでとは違ったチャレンジが必要な環境と言えます。

──そもそも、1972年のアポロ計画以来、人類は月に降り立っていません。

月に人が行く必要性については常に議論されてきました。ロボットやAIの技術がどんどん発展している中で、人間が月に行く必要があるのか、というのは重要な論点です。人命を危険にさらすことなくロケットを打ち上げ、人間を帰還させるには莫大なコストも掛かります。そのため、無人でできる実験や観測などは無人で行う、という考えが基本的になってきています。

──一方で、民間人でも近い将来月への旅行が可能になるとよく耳にします。

はい、実際にはいろいろな国が有人月面探査を目指しています。これは、各国バラバラにやっているわけではなく、協力しながら進めています。世界各国の宇宙機関で構成された国際宇宙探査協働グループ「ISECG」という組織があり、日本、米国、ロシア、欧州、UAEなど各国の宇宙機関がメンバーです。その中で、共通のビジョンとして「グローバルエクスプラネーションロードマップ」という宇宙開発のロードマップが出されています。(下図)

出典:内閣府 The Global Exploration Roadmap(ISECG公開資料


その昔、人々が大航海時代に危険を顧みず大海原に漕ぎだしたように、宇宙を探検することは人類としての本能的な欲求なのだと思います。地球以外の星へ活動領域を広げていきたいと考えたときに、まずは「人が行ける、人が住める」ことを立証することが必要になってきます。

近年、地球に比較的近い環境を持つことを理由に、火星探査への関心が世界的に高まっています。ところが、実際のところ火星は遠くて、行くにはロケットで半年もの時間がかかりますし、技術的なハードルも高いです。そこで、まずは最初のステップとして、地球から一番近い天体である月に行き、そこでいろいろな技術を蓄えてから火星に行く、という計画が立てられています。

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