最大勢力を誇った五代目山口組の最高幹部たち(撮影 眞弓準)
2021.06.23
# 山口組

ヤクザ雑誌を心底ビビらせた溝口敦の仕事

地雷だらけの暴力団報道

裏社会に強いジャーナリストの双璧、溝口敦と鈴木智彦。その溝口敦の話題作『喰うか喰われるか 私の山口組体験』を鈴木智彦が豊富な現場取材に基づく視点から説き明かす。

馬鹿野郎!本当に刺されたんだ!

私の古巣である編集プロダクションは、毎月『実話時代』と『実話時代BULL』という暴力団専門誌を企画・編集していた。

この暴力団専門誌という異形は、1984年に勃発した山一抗争を契機に生まれた。ジャーナリズムへの憧憬と、マスメディアの本流から外れたアウトサイダーの劣等感が『実話時代』編集部の進路を決定づけた。同じくヤクザ記事をウリにする『実話ドキュメント』が、セックス&バイオレンスを徹底したのに、『実話時代』はインテリ崩れのプライドを捨てきれなかった。エロ記事を完全排除し、非公認ながら暴力団のオピニオン誌を志向した。

私が入社した1995年、溝口敦はすでにビッグネームで、不定期ながら要所で巻頭記事を依頼していた。溝口にも相応の思い出はあるらしい。『喰うか喰われるか』に以下のような記述がある。

「業界誌だから当然ヤクザには甘口だったが、同誌でも私はヤクザに迎合的な書き方はしなかったし、酒井さん(創刊時の編集長兼編プロ社長)も要求しなかった。彼から私は『洞察力がある』と見られていた」

実際、溝口は別格扱いで、一切、注文を付けなかった。そのため溝口の原稿だけが異質で、生原稿は要注意案件だった。いや、正確にいうなら爆弾扱いされていた。新入社員が入るたび、溝口はダシにされた。

 

「いいかよく聞け新人! もしこの原稿がそのまま印刷されたら俺は危ないし、編集長(※私。『実話時代BULL』の編集長だった)もただでは済まない。編集部は終わるし、三和(※三和出版。版元)もヤバい。とにかく余計なことはするな!」

仰々しさに愛想笑いをすれば「馬鹿野郎!溝口さんはそれで本当に刺されたんだ!」とがなり立てられた。そこまで深刻な事態にはならないにせよ、溝口の生原稿はヤクザ専門誌基準でのNGワード&表現があちこちにある。ビビるくらいでちょうどいい。

溝口敦氏(撮影 岡田康且)

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