世界的権威が指摘、コロナ禍が明かした医療現場の不都合な真実

病院に行かないほうが健康になる?
米ベンチャー投資家で著述家の山本康正氏が「すべてのリーダー必読」と絶賛するニコラス・クリスタキスの著書『疫病と人類知』。医師であると同時にネットワーク科学、進化生物学などの学究でもあり、「世界の知の巨人」と呼ばれるほどの著者の知見が詰まった同書第7章「深遠かつ永続的な変化」から、新型コロナのパンデミックが明かすことになった、医療現場の長年の問題についてご紹介しよう。

対面診療の多くは処方箋を出してもらうため

新型コロナウイルスは、今回のパンデミック時に長年の医療行為の形態の変化を促したが、こうした変化の多くはパンデミック後にも継続する可能性が高い。臨床疾患のある人のケアは、終末期のケアを含めた治療に影響を与えた。また、新型コロナウイルスの患者の多くは、肺障害、腎障害、心臓障害、神経障害などの長期的影響を受けることになる。これは、ポリオや1918年のインフルエンザ(これについては後述する)のパンデミック後と同じように、今後数年間は障害の急増につながるはずだ。そのため、病院の体制は、新たに設立されたポスト新型コロナウイルス用の診療所で、大量の患者をケアする準備をしている。

とくに激変したのは、対面診療の診療報酬に関することだ。政策立案者や専門家は、電話やインターネットを利用した医療の提供を認めるべきだと長年主張してきたが、突然それが許可されただけではなく、積極的に奨励されるようになったのだ。医療の大部分が、医療施設の混雑を緩和するために、オンラインに移行した。産科医は、とくに問題のない妊婦の定期検診を電話で行った。皮膚科医は患者にビデオや写真を見せて簡単な皮膚のトラブルを診断した。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の教授であり内分泌外科医であるわたしの兄弟のクアン=ヤン・ドゥー医師は、手術前に患者と直接会うことには今なおこだわっているが、手術後の経過観察の予約のほとんどは、ビデオで簡単に受け付けられることに気づいた。

 

心理療法士はオンラインに移行したが、その成果はまちまちだった。内科医は、オンラインのビデオ会議で患者の病歴を尋ね、助言をしたり、薬局に電話で処方を知らせたりすることで、多くの問題に対処した。プライマリ・ケアの医師が扱っていた専門科への紹介状の多くも、遠隔で管理できるようになった。イェール大学の同僚のパトリック・オコナー医師は、遠隔医療に関しては「最近の2週間で達成したことのほうが、過去5年間で達成したことよりも多かった」と話してくれた。

別の同僚のマイケル・バーネット医師は、患者が医師の診察を受けに来る主な理由は、優れた医療や臨床的なニーズとは無関係であると指摘し、多くの対面診療の無駄の核心を突いた。こうした予約の多くは、パターン化した事柄(処方箋を出してもらうためなど)に訪問を義務づける保険の規制を満たすためであり、これは遠隔で簡単に処理できる。実際、プライマリ・ケアの内科医の仕事の多くは診察室に縛られることなく行えるので、遠隔医療への移行により、患者の病歴を丁寧に聞き取るという、良い医療の特徴の1つが復活した。

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