なりたい自分を考えたときについてまわるのは、どんな仕事をするか、どんな働き方をするかということ。これからの働き方に向けて今、私たちは何をすべきか、これまでさまざまな人と仕事の関係を見つめてきた働き方研究家の西村佳哲さんに話を聞きました。

お話を伺ったのは…
西村佳哲(にしむら・よしあき)
1964年、東京都生まれ。プランニング・ディレクター。リビングワールド代表。働き方研究家。主につくる・書く・教えるの3つの領域で働く。東京と徳島県神山町の二拠点生活を送り、現在、神山町の「まちを将来世代につなぐプロジェクト」のメンバーであり理事を務める。『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)他、仕事にまつわる多数の著書がある。livingworld.net

SDGsを光源にして、
照らされた先のものごとを見る

“働き方”には、個人から会社組織まで人それぞれのスタイルがあります。置かれた環境や家族構成などの事情もあるので一概に語れないことが大前提ではありますが、その上でここ最近思うことは、働いて得たお金で自分を充実させようとする人と、仕事や働いている時間そのもので充実させようとする人が以前に比べてより二極化している、そんな印象があります。

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仕事の「意味」や「やりがい」というものは、昔の日本であれば、国が経済的に豊かになることであり、モノがない時代では商品を作ることに意義がありました。それが、現代では飽和状態で単に生産するだけでは売れなくなり、作る意義自体が薄れてしまった。今、おそらくいろいろな仕事場で、これは本当に意味があるのかなと、そう感じることが増えていると思います。

仕事そのものを充実させている人はそこで新しい意味を作り出しますが、働いて得たお金で日々を充実させようと考えている人は、仕事以外のところで意味を探すようになります。休日に遊びの予定を詰め込み、私生活を充実させて家族との時間を大切にする。それでなんとかワークライフバランスを保とうとする。それでも今の社会には、より少ない人数でより早く成果を出すことをよしとする風潮があるので、意味を感じられないまま仕事時間が増えて、バランスが取れなくなる人が多い、というのが現状ではないでしょうか。

Photo by iStock

この問題について、私は、単なる働き方の見直しやリニューアルだけでは解決できないと思っています。例えば、リモートワークが常態化し、いろいろと業務改善が進んで、ファシリテーションのレベルが上がり、会議もクリエイティブになったところで、やっている仕事そのものが内容的にブラックだったり、一部の人に無理を強いるような環境だったりしては、働く意味や意義は本質的には得られません。

SDGsは社会問題や社会課題を共有するプラットフォームになっていると思いますが、SDGsを光源にして物事がよく見えるようになることが大事なことだと思います。SDGsそのものが目標になっていると、いわば「綺麗な照明器具を作る」ことだけに注力しているようなもの。本来の照明器具の目的は、照らしたその光で空間を居心地よくすることであり、光源自体を見せることではありません。仕事をし続ける私たちもその先にあるものを見たいと思いますよね。それは照らされた先に意味があるからです。

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では、その先にあるものをつかむためにはどうしたらよいのか。国や社会が「働き方改革」と言っているからやるのではなく、私はこうしたい、私たちはこうしようと意思を持って考えなければなりません。「他人がこう言っているからやる」仕事より、「自分がこう感じているからやる」仕事が多い社会の方が、暮らしていても楽しいはずです。誰かにプレゼントを贈られたとき、本に書いてあったからと渡されるよりも、「あなたに喜んでもらえると思って」と渡されるほうが断然嬉しいのと同じで、個人や主体にきちんと動機があることが多い社会のほうが、健全であり、温かい気持ちが増えてゆくと思うのです。