僕のカミングアウトを「安倍晋三」で遮った母

僕は数年前、まだ30歳になって間もなかった頃、自分がゲイであることを母に打ち明けた。

別に一生言う必要もないだろうと考えていたのだが、言わないことで何となく母に対して感じ続けていた心の距離を、ありのままを話すことによって縮めようと思ったのだ。女手ひとつで僕を育ててくれた母との関係を、30代になったということもあり、修復したかったというのもある。

そして僕は、いつもと変わらないある休日の夜、意を決して話した。

〔PHOTO〕iStock

「実は、男の人が好きなんだ」

「知ってたよ。母親が気付かないわけないでしょ」

母はなんでもないことのようにそう言った。僕の性的指向を、あっけないほどに受け入れてくれていたのだ。

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まぁ思い返せば、僕は昔からBLのライトノベルや漫画、そして海外ゲイ映画のDVDなどを実家の部屋に置いていた。そりゃ母も気付くだろうよと今なら冷静に思えるのだが、カミングアウトした直後に母の口からこの言葉を聞いた時は、ようやく真正面から向き合えた気がして、不覚にも泣いてしまった。

この瞬間までは、これから改めて母とちゃんとした親子関係が構築できると信じていた。その直後、何の脈絡もなく彼女がいきなり安倍元首相や日本政府を称賛する話を始めるまでは。

僕が勇気を振り絞って行ったカミングアウトは、母の唐突な安倍晋三語りにより、たった数分で終了した。