高齢の親や親せきが病院や医者に文句を言って困る――介護をしている人の中でそんな悩みを抱えている人は少なくないのではないだろうか。

義母と実母とふたりの認知症に加え、子どものいない独身の伯母の認知症にも悩んでいたのが、フリーライターの上松容子さんだ。しかも義母は被害者意識が高く、実の息子にも優しくすることができない不思議な存在だった。その謎の行動にも上松さんは悩まされていたのだ。

連載「謎義母と私」、前回は認知症に加え、発達障害の可能性も医師から指摘された義母に加え、それまで義母の了承がおりていなかったもっと認知症が進んでいる実母との同居が始まった時のことをお伝えした。今回は義母の困った病院とのやりとりや緑内障・白内障についてお届けする。なお、個人が特定されないように上松さん自身もペンネームであり、登場人物の名前は仮名としたドキュメンタリーである。

容子    20代後半で結婚。現在50代
夫     容子と同い年。営業職
明子    容子と夫の一人娘
実母登志子 昭和ヒト桁生まれ 元編集者を経て専業主婦。認知症で要介護2
義父       東京近郊在住 大正生まれ 中小企業社長
義母トミ子 昭和ヒト桁生まれ 元看護師 専業主婦
上松容子さん連載「謎義母と私」今までの記事はこちら
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「点滴してくれない医者はヤブ」

まだ義母が要介護認定される前のこと。具合が悪いというので、我が家のかかりつけ医を受診させたことがある。めまいがする、フラフラすると訴えてきたのだが、いきなり大病院を受診するわけにはいかない。まず信頼できるクリニックで診断してもらおうと考えた。

かかりつけ医は女性で、てきぱきと診察しながらもきちんと話を聞く人だった。周囲の専門医や総合病院ともきちんと連携している。私自身、腹痛と腰部の違和感を訴えて受診したとき、すぐさま腎臓結石と判断。泌尿器科に紹介状を書いてくれてたいへん助かった。
女性の医師のほうが安心できると思って連れて行ったところ、軽い風邪と診断され、飲み薬を処方されて帰ってきた。

重病でなくてよかったじゃないですか、と言うと、義母は不機嫌そうに黙って部屋に入っていった。何が不満だったのだろう。ソツのない対応をする先生だから、酷いことは言われないはずだけれど。

義母の態度が気になって、夕飯を持っていったときにちょっと聞いてみた。
「今日のお医者さん、なにか問題ありましたか?」
すると不満そうな表情でこう返してきた。
「どれだけ頭がいいかどうか知らないけど、テキパキテキパキした物言いで、偉そうで嫌だったよ」
「でも、あの先生は診断が的確で、ちゃんとこちらの話も聞いてくれるし、いい先生ですよ」

義母はなおも不満そうな顔でこう言った。
「だって、あの先生、点滴してくれって言ってるのにしてくれなかったよ」
え、どうして点滴してくれなんて言ったんだろう?
「フラフラして元気が出ない、点滴してくれってこっちが言ってるんだから、黙ってしてくれりゃあいいのにさ、必要ありませんだって」

それは先生の対応が当然だろう! しかしさらに話を聞くと、元住んでいたところでは、元気が出なくなると、近くのクリニックに行って点滴を打ってもらうのが当たり前だったというのだ。仰天した。

税金を大切に使うべく不要な治療はしない医師よりも、言うとおりに薬を出してくれ、言うとおりにしてくれる医師を「いい先生」ととらえる傾向にあることは多い。義母は認知症になってそれに拍車がかかった Photo by iStock