飛込元日本代表の馬淵優佳さんがアスリートに率直にインタビューをして綴る連載「スポーツが教えてくれたこと」。100メートルハードルの寺田明日香選手にインタビューをした前編では、小学生のときから陸上競技をはじめ、順調に日本一にも輝いていたが、摂食障害や月経困難に苦しみ、結果23歳で引退するまでをお伝えした。

しかし2013年、23歳のときに引退し、2019年に29歳で陸上競技に復帰、同じく100メートルハードルで日本新記録を更新したのはご存知の通り。その6年間はどのように過ごしていたのか。そしてなぜ日本新記録を出すまでに至ったのか。後編で具体的にお伝えしていく。

26歳と31歳。年も近く、すっかり意気投合した寺田明日香選手(写真右)と馬淵優佳さん(同左)撮影/渡部薫

授乳しながら課題をこなしていた

2013年の引退後まもなく結婚し、2014年早稲田大学の通信制に入学。同年8月には女児を出産した。思わず聞き返してしまうほどの目まぐるしさだが、当時の慌ただしい日々を笑いながら話してくれた。

「引退してからは、経理のバイトもしていたし、大学では課題が多くてめっちゃ大変でした。通信の授業をちゃんと通しで見ているかを試されているような課題ばっかりだったから。それでも95%くらいは課題もしっかりこなしていました。産後半年はめっちゃ単位落としましたが(笑)、母乳は1歳くらいまであげていたので片手で授乳しながら、パソコンで課題をこなしていました」

赤ちゃんを育てながら課題に追われる日々…(写真はイメージです)Photo by iStock
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2016年9月に7人制ラグビーに転向。同年末に行われたトライアウトに合格し、2017年から日本代表練習生として活動を始めた。なぜ陸上ではなく、ラグビーに転向したのか。

「実は2013年の引退時に一度お誘いを頂いていたんです。その時はお断りをしたんですけど、2016年のリオオリンピック直後にもまたお誘いを頂いたんです。そのとき、『オリンピックを一緒に目指そう』と言ってもらえる人はこの世に何人いるのか考えたんです。こんなに誘ってもらえることなんてないんじゃないかって。こんなに何度もチャンスをもらえているのなら、一度挑戦した方がいいんじゃないかと思い、決意しました」

寺田選手は一児の母。当時、まだ2歳になったばかりの娘がいるなか、新しい世界に飛び込むことへの不安はなかったのだろうか。

「大学で乳幼児期に関わる人間の数や関係性の数について研究していました。そこで、子どもにとって重要なのは母親だけじゃないということがわかったんです。日本では母親の方が子育ての負担は多いですよね。シッターなどを利用することに抵抗がある人が多いというのも現状です。だけど、それが逆に子どもの世界観を狭めてるんじゃないかって思ったんです。幼い頃からいろんな人の考えに触れることで『こんな考えもあるんだ』『ママはこう考えているんだ』と子どもながらに考えられるようになった方がいいと思いました。それで子育てで頼れるところがあるなら頼った方がいいと思えるようになりました」