かくも楽しきドラマ「時代考証」のウラ側

考証家の特別座談会
大石 学, 門松 秀樹, 山田 順子

実際のところ私たちが研究論文を書いても限られた人しか読まないけれど、ドラマになったら一気に広まる。

良い例が大河『真田丸』('16年)です。真田幸村とは講談物とかで使われる架空の名前で、本名は真田信繁であると歴史学的にはかなり前から判明していましたが、なかなか一般には広まりませんでした。それが『真田丸』で、ようやく世間に定着しました。

山田 私の場合は、お二人のように研究者ではなく、あくまで専業の「時代考証家」です。だから「これが自分の専門」というのはありません。

私のスタイルは台本を読み、監督が美術スタッフとセットや小道具、衣装などを決めるための相談にのり、撮影現場では出演者に所作を指導し、監督の後ろでモニターをチェックして、編集後にテロップの確認をするまで。とにかく全部です。

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私は、堂々と「時代考証家」と名乗れるようになるまでに30年かかりました。だから弟子入り希望の若い人が来ると「早く時代考証の仕事をしたかったら、大石先生のところに行ったほうがいいわよ」と言っています。

大石 (笑)。研究者でも最近、時代考証をしたいという若手が出てくるようになりましたね。

大河ドラマなどは新資料の発見があったりして研究が進む。作家やスタッフとの違いも新鮮です。

 

研究者は資料から実態に迫ろうとするけれど制作陣はいきなり「人間ってこうじゃない?」と衝いてくる。この素材をそう解釈するか! と刺激を受けることができるのも時代考証の醍醐味ですね。

大石学(おおいし・まなぶ)
時代考証学会会長。東京学芸大学名誉教授。専門は日本近世史。大河『新選組!』『篤姫』『龍馬伝』『八重の桜』『西郷どん』などを担当
門松秀樹(かどまつ・ひでき)
東北公益文科大学准教授。専門は近代日本政治史。『八重の桜』、朝ドラ『わろてんか』などで資料提供、『青天を衝け』時代考証
山田順子(やまだ・じゅんこ)
時代考証家。『JIN-仁-』『天皇の料理番』『この世界の片隅に』(TBS)、『一休さん』(CX)などの考証を手がけた

『週刊現代』2021年6月12・19日合併号より

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