かくも楽しきドラマ「時代考証」のウラ側

考証家の特別座談会
大石 学, 門松 秀樹, 山田 順子

山田 慶喜様、とかね。

門松 現代の私たちにとって、「名」にあたる部分は諱といって、実の親以外はよほど高位の人間、たとえば徳川慶喜なら将軍や天皇ぐらいしか口にしてはいけない呼び方なんですよね。

大石 慶喜ならば、官位で「中納言殿」、勝海舟ならば「安房守」、石田三成なら「治部」か「治部少輔」と言わなければなりません。

名奉行として有名な大岡忠相も「能登守」から「越前守」に変わっています。その通りに呼び合うと大混乱するわけです。まあ仕方がないのかと。

山田 私もなるべく諱は削りますが、「誰だかわからない」と言われるので一回は仕方ないかな、と譲歩しています。あと気になるのは、登場人物が皆、「幕府」と言いたがることです。

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大石 庶民は「御公儀」ですね。現代の私たちは身分がない時代に生きていますから、そのあたりがわかりにくい。

時代劇では、大名行列の沿道で民が平伏している場面がおなじみですが、来日外国人の記録では、それは行われていないとあります。

山田 農民は裏で農作業とかしていたんですよね。でも大名行列といったら、あのイメージでないと「時代劇」の「劇」じゃなくなってしまうこともあります。

 

大石 そうですね。やはり視聴者がある程度期待しているイメージに応えないといけない。

考証家と名乗るのに30年

門松 ノンフィクションではなくドラマや映画である限りはそうですよね。時代考証は、私たち歴史研究者の研究成果を社会に還元する意味もあると思います。

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