かくも楽しきドラマ「時代考証」のウラ側

考証家の特別座談会
大石 学, 門松 秀樹, 山田 順子

主人公のすずさんが嫁いだ呉は母の里だし、育ったという設定の江波と私の故郷・東雲はほぼ同じ状況の町。私の記憶の中に同じ風景が広がっている。これは使命としてやらざるを得ないだろうと覚悟を決めました。

大変だったのは、ホームドラマのせいか、やたらと食事の場面が出てきたことですね。原作には5食ぐらいしか描かれていないのに、劇中では45回も食事シーンがあったんですよ。

あと40食を考え出さなきゃいけない。私は終戦から8年後の生まれですから、そのまま私が食べた広島郷土料理の40食を出しました。

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大石 でも庶民史としてそれは貴重ですね。今度はそれが資料になる。

暖簾が左から横書き

門松 存命の方がいるほうが大変な場合もありますね。テレビ東京の『永遠の0』('15年)を担当したときには、「敬礼の仕方が違う」と指摘があったそうです。

軍艦内は狭いので敬礼は脇を締めて角度を下げるんだという指摘だったんですが、旧帝国海軍の資料を読むと、脇を締めて敬礼するとは書かれていない。

大石 ローカルルールがあったのですね。

門松 また、これは私が直接担当したのではありませんが、2・26事件のドラマで、決起部隊が襲撃する場面でピストルを両手で構えて撃った。

すると元軍人だという視聴者の方から「大日本帝国陸軍はそんな下品な形でピストルを撃たん」とクレームが入ったそうです。調べたら、たしかに当時は体を横にして片手で構える競技射撃のスタイルだったんです。

 

大石 今だと両手で構えるほうが自然に思えます。

門松 その作品には、軍事指導として自衛隊の方が入っていたそうです。現在の自衛隊は米軍方式なので、両手撃ち、いわゆるコンバットシューティングで教えたんですね。

大石 なるほど、どうしてそうなったのかの検証も大切ですね。気をつけないと、うっかり坂本龍馬にも両手で撃たせてしまうかもしれない。

山田 龍馬といえば、『JIN―仁―』('11年・TBS)の時に、やたらと龍馬(内野聖陽)から外科医の仁先生(大沢たかお)に手紙が来る設定で困りましたね。

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