どうせならコロナ禍を機に過去の「自分」と「習慣」にサヨナラしよう

2024年「ポストパンデミック期」が始まる
ニコラス・クリスタキス プロフィール

タイピングの速さやリズムまで監視される学生たち

自動化されたコンピューターによる手法が不正行為の予測に使われるようになった。学生が1分間に2回以上、画面以外のところを4秒以上見ていた場合は、疑わしいと判断された。学生が替え玉で試験を受けることを阻止するために、ソフトウェアにはIDカードと連動した顔認識機能が用いられた。学生のタイピングの速さやリズムも監視し、個人のそれぞれの特徴を織り込んだ基準値と比較することができた。試験監督会社は、撮影した音声や映像、学生のその他個人情報などの権利を保持しており、教授のなかには、このような方法は大学を監視の道具に変えようとしていると非難する者もいる。

オンライン授業に関連するプライバシーの喪失はほかにも見られる。学校とビデオ通話をしていた5年生の男子の例では、背後の壁に掛けられているBB銃に教師が気づき、スクリーンショットを撮って警察に通報した。その後、家族は警察官の予期せぬ訪問を受けて驚いた。警察官は家族が法律に違反していないと判断し、20分後に立ち去った。校長は、たとえBB銃でも、仮想の教室に銃があることは、現実の教室に銃を持ち込むことと同じだと述べた。

 

自己省察の時代

さらにパンデミックによる変化を挙げれば、人間の死の必然性に思いを巡らせたからなのか、あるいは自宅に閉じこもりきりで孤独に突き動かされたのか、信仰の有無にかかわらず、多くの人は自分の人生に意味を与えたものは何か、内省するようになった。この自己省察の機会が、2020年6月に起きた社会正義を求める大規模な抗議活動のもう1つの要因として重要な役割を担ったと、わたしは考えている。

また、パンデミックは自らの社会的交流を見直すきっかけとなり、多くの場合は他者への共感と認識をさらに育むきっかけとなった。たとえば、ひどい別れ方をした元配偶者の間で、自分たちの子どもの世話を調整する際に、思いやりをもって、さらにはいたわりを込めて、コミュニケーションをとる方法を見つけたという話が聞かれた。災害は人間の最悪の部分と最高の部分を引き出し、共通の敵に対して団結させる。自分の価値観を考察するために立ち止まり、この世での限られた時間をどのように過ごすかこれまで以上に綿密に検討するときの道徳心の高まりが、人々の生活を活気づけていることに、わたしは気づいた。(翻訳/庭田よう子)

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